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2021年6月1日

初級

今週は第13課です。絵はジェリコ Théodore Géricault の『 le Radeau de la Méduse ( メデューズ号の筏 ) 』ですが、いつもの通りまずは文法。今回は条件法です。

「もしかしたら~、~かもしれない、~らしい」などと、断定しにくいときは条件法デス ! 例えば、とある小説にこんな一節がありました…。

♦ Vous devriez donner votre linge aux trucs automatiques américains, ça vous ferait du travail en moins...
洗濯物は、アメリカのあの自動の"ヤツ ( 洗濯機 ) "に任せるべきかも。そうしたら仕事が減るかもしれないよ。

過去のことを「~だったかも、~だったのでしょう」というなら条件法の過去。

♦ Ça aurait été un beau spectacle.
すごい光景だったのでしょうねえ
♦ ...ma maman, vous l'auriez pas vue par hasard ?
もしかして私のお母さん見ませんでした ?

© Au Musée du Louvre, Editions Asahi

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中級

今週は3課 『 Les Gillets jaunes 黄色いヴェスト運動 』です。

フランスでは車の運転手は、車の中に黄色いヴェストを備えておかねばなりません " les automobilistes doivent toujours avoir un gilet jaune dans leur voiture, en cas de panne ou d'accident. (© 2021 Milan Presse) "。

2018年末、燃料税の引き上げが決まると、人々はこの黄色いヴェストを着て引き上げに反対する運動を起こしました。公共交通手段の整っていない地域で車を利用せざるをえない人々にとって、燃料税の引き上げは大きな痛手であったためです。しかし実は、この増税は運動の引き金になっただけで "...l'augmentation de la taxe sur le carburant...est seulement l'élément déclencheur du mouvement"、もともとたくさんの多様な問題があったことが、運動の広がりの背景にあったようです。

2020年、コロナウィルスで外出や集会の制限がだされ、黄色いヴェスト運動の集会もできなくなりました。今日ようやく、感染が減少してきましたが、黄色いヴェスト運動は再燃するのでしょうか…。この6月には地域圏議会選挙が、来年には大統領選が控えていますネ…

© A la page 2021    Edition ASAHI

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上級

今週は『Le chapeau de Mitterrand ミッテランの帽子』の第二回目。

ダニエルは仕事のストレスをとりはらう必要を感じていました。新任の部長は適任者とはいいがたく、経理の数字は頭を悩ますばかり。自分をとり戻さねばなりません " Daniel éprouvait le besoin de ' se retrouver ' "。決心はつきました。あのブラッスリーであの " 海の幸 " を堪能しよう…。ダニエルは重厚なドアを押しました。

「ご予約済みでいらっしゃいますか」と支配人。「いや時間がなくて」ととぼけるダニエル。どのテーブルもふさがっているようにも見えますが、キャンセルがあったようです。ダニエルはボーイに案内されて席につきます。まっ白のテーブルクロスに銀食器やグラス...どれも眩いばかりです。人工皮革の紅い表紙のメニューを開けば、「海の幸のロイヤルプレート」が目にとびこんでくるではありませんか。値段はお高め。仕方ありません。ワインメニューの値段も予想を超えていますが、「プイイ・フュイセ pouilly-fuissée 」がお目当てでしたから、ハープボトルを注文。「申し訳ございません。ホールボトルでのご用意のみでして」とボーイさん。ケチと思われたくありません…Daniel ne voulut pas passer pour un radin 。「それで結構」とダニエル。

ダニエルは周囲のテーブルの客をそれとなく見回します。オーダーメイドに違いない見事な三つ揃えを着た紳士がそこここに。そして…。
次回は、p18 の " A l'une des tables situées sous les grands miroirs, une élégante femme brune en robe rouge écoutait..." からです。

© " Le chapeau de Mitterrand ", Antoine Laurain, J'ai lu

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2021年6月8日

初級

『バイロン卿』
ジェリコ

今週も第13課。ジェリコ Théodore Géricault の『 le Radeau de la Méduse ( メデューズ号の筏 ) 』のテキストを読みました。

ナポレオンが退き王制にもどりつつあった1816年。アフリカにむけて出航したメデューズ号が座礁します。150人の乗船者はにわかづくりの筏に乗り漂流します。筏は15日後に発見されますが、生存者は15人のみ。

" le Radeau de la Méduse "を描くために、ジェリコは生存者から話しを聞き、極限状態の人間の身体の様子を観察し、筏の模型をつくって波に翻弄されるさまを研究したそうです " Il construisit même une maquette du radeau et étudia son mouvement sur les vagues furieuses de la mer"

古典主義の画家がおなじ絵を描くとしたら、これほどの動きのある構図にはならないでしょうし、遭難者らの表情にこれほどの苦しみが刻まれることもないでしょう " Chez un classique, la composition serait moins dynamique, il n'y aurait pas autant de douleur sur les visages "。「ロマン主義時代の到来、そしてドラクロワの登場を告げる作品である」とのことでした。

© Au Musée du Louvre, Editions Asahi

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中級

© 2002-2021 Mediaterre V4.0

今週のテーマは 『 Le changement climtique 気候変動 』です。

天然資源の行き過ぎた開発、自然の破壊、汚染 "...surexploitation des ressources naturelles, destruction de la nature, polution..."。 その結果として顕在化した現象の一つが気候変動。背景にあるのは、富裕国の消費社会 " la société de consommation des pays riches "。その経済・社会モデルを変えねばならないと唱える人が増えつつあるそうです。そうした人々のなかの一人にグレタ・トゥーンベりさんがいます。正論を説く彼女にたいする評価は分かれることが多いそうですが " C'est une personne clivante..."、目をむけるべきは彼女自身のことではなく、今まさに起きている気候変動です" ...le problème, ce n'est pas elle : c'est le changement climatique ! Il est déjà en train de se produire "

余談ながら、地球が誕生したのが1年前だと仮定すると、産業革命とその延長上に起きている気候変動とは、最後の1秒以下の出来事だそうです…。

© A la page 2021    Edition ASAHI

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上級

今週は『Zazie dans le métro 地下鉄のザジ 』の第三回目。

ガブリエルはザジに向かって、車窓からみえる建物の名前を誇らしげに教えるのですが、シャルルからの横やりが入ります。どうやらガブリエルは間違ってばかりのよう。

車中は実にかまびすしく、ザジがふたたびシャルルのタクシーに難癖をつけはじめれば、そこは穏便にとガブリエルが話題を変えます。ザジからは悪態がポンポン飛び出してきますが、一同とりあえず食事の前にちょっと一杯ということになり、カフェへ。ザジが飲みたいのは「カコカロ」。ウェートレスに無いと言われても、 C'est hun cacocalo que jveux et pas autt chose ( 私が欲しいのはカ・コ・カ・ロ。それ以外はいらない ) (1) と譲らず、一悶着。

(1) hun は "h aspiré 。ザジが思いっきり息を吐いて" un (cacocalo)"と言っています !!
jveux は je veux, autt は autre ... 聞こえたとおりの綴りです

* * * * * * * *

一行、再びタクシーに乗り、なんとか無事にガブリエルのアパルトマンに到着しましが、シャルルは早々と一階のカフェレストラン「ラ・カーヴ」に退散。「口の悪い娘がやって来た」と店主に愚痴をこぼします。
次回は、p27 の 1 行目 " Pas encore, répondit gravement Charles..." からです。

© "Zazie dans le métro ", Raymond Queneau, Folio

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2021年6月15日

初級

今週から第14課です。絵は Françis Boucher フランソワ・ブーシェ" Diane sortant du bain ( 水浴のディアナ ) "です。いつもの通り、絵のほうは少々おあずけで、まずは文法の復習から。直接話法と間接話法をしました。

『 Boule et Bill ブルとビル』の吹き出しを見てみると…。

© Edition Jean Dupuis

ブル君がお巡りさんに「お巡りさん、ぼくの犬を見ませんでした ? 」と質問。これをカギカッコをはずして間接話法にしてみます。ついでに「尋ねました、聞きました」と主節の時制も過去に変えてみましょう。

"M'sieur l'agent, vous n'avez pas vu mon chien ? "
⇒   Boule demande à l'agent de police s'il(si celui-ci)n'a pas vu son chien .
⇒   Boule a demandé à l'agent de police s'il(si celui-ci)n'avait pas vu son chien .

© Edition Jean Dupuis


もう一つの吹き出しは、地面に耳をつけているビルに「何やってんの ? 」とブル君が聞いています。

" Qu'est-ce que tu fabrique, Bill? "
⇒   Boule demande à Bill ce qu'il fabrique.
⇒   Boule a demandé à Bill ce qu'il fabriquait.

© Au Musée du Louvre, Editions Asahi

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中級

今週のテーマは 『 La trottinette éectrique 電動キックスケーター 』です。

自動車はまことに便利な移動手段ですが、自然に優しいとはいえず、都市では渋滞に悩まされることも。一方公共の乗りものは、ドア・ツー・ドアという訳にはいかず "ils ( les tronsports en commun ) ne peuvent pas nous transporter de porte à porte " 、そこが少々不便。

しかし EDP は違います。 Engin de Déplacement Personnel の略だそうで、自転車、キックボードなどを指すようです。ジャイロボートとかホバーボードなるものもあるようです。

昨今人気を集めているのが電動式のキックスケーターで、持ち運びしやすいことから、公共交通機関に持ち込むこともでき、手入れも保管も簡単。なにかと便利なようです。

ただし要注意なのが車や歩行者との共存。接触事故が少なくないようです。ここは一つ「道」のあり方に知恵をしぼりたいところ。デンマークやオランダでは自転車道のために、都市大改革 ? が敢行されたと寡聞ながら聞いております… ハ イ

© A la page 2021    Edition ASAHI

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上級

今週は『 Le chapeau de Mitterrand ミッテランの帽子』の第三回目です。

あたりを見回せば、人生に成功したかに見える男性群やら、赤いドレスをまとった女性やら…ダニエルの目には優雅な人ばかり。

そうこうするうちにダニエルのテーブルにワインクーラーにはいったプイイ・フュイセが置かれ、ソムリエが仰々しくコルクの栓をあけます。ダニエルはー口、口に含みます。ソムリエの上から注がれる視線を感じつつも、気のきいたコメントは出てきません。ですので同意の合図は、軽くうなずくだけ。続いて黒パンのはいった籠、バター皿、エシャロット入りビネガーが置かれ、そしていよいよ海の幸の盛られたプレートが運ばれてきました。1/4 にカットしたレモンをカキの上でそっとしぼリます。虹色をしたカキのうすい膜が心なしか縮むさまに 目を奪われます。

と、ちょうどその時、ダニエルの隣のテーブルに、支配人に案内された客がやってきました。脱いだコートと帽子を傍に置き、ダニエルに「お邪魔じゃありませんか?」とたずねます。蚊の鳴くような声で「いいえ、どうぞ」と答えるダニエル。

コートと帽子の主はミッテラン統領・・・。

大統領の前には二人の男性が腰をおろします。一人はウェーブのきいた銀髪。確か前外務大臣のローラン・デュマ…。軽く微笑みかけられたダニエルは、何とか冷静を保って笑みを返します。もはやカキの味は感じられません。もしかしたら自分は今ベッドの中にいて夢を見ているのか…とも思ったりもしていますが、横にいるのは正真正銘の大統領。手をのばせば触れることだってできそうです。
次回は p23、5 行目の " Avant que j'oublie...commença-t-il à l'intention de Roland Duma,..." からです。

© " Le chapeau de Mitterrand ", Antoine Laurain, J'ai lu

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2021年6月22日

初級

今回は François Boucher フランソワ・ブシェ" Diane sortant du bain ( 水浴のディアナ ) "にまつわるテキストを読みました。

沐浴を終えたばかりのディナの髪には、三日月の金のかんむりが輝いています " Elle ( Diane ) sort à peine du bain... Dans ses cheveux brille ... un croissant d'or " 。かたわらには、弓や矢、しとめられた鳥などが置かれています。それもそのはず、ディアナは狩猟の女神なのです。

横にいる女性はニンフ nymphe 。山河草木の精です。ディアナはニンフ ( ニュムペー ) 達と清くつつましやかに暮らしていたのでした。

ところがある時、猟師が水浴びをおえたばかりのディアナを目にし、恋に落ちてしまいます…。と今回はここまで。次回も続きを読みます。

© Au Musée du Louvre, Editions Asahi

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中級

今週は第 6 課。タイトルは『 Anne Hidalgo アヌ・イダルゴ 』です。

2014年、女性がはじめてパリ市長に就きました。アンヌ・イダルゴさんです。2020年にも再選されました。スペイン出身で 14 歳の時にランス国籍を取得。社会党に所属し、エコロジーを重要政策の一つとしているとのこと "L'écologie est un aspect important de la politique d'Anne Hidalgo " 。セーヌ河沿いの自動車専用道路を歩行者用の道に変更したり、旧型の車両の走行を禁止したりしたそうです。

アンヌ・イダルゴさんには来年の大統領選に出馬してほしいと望む声もあるようですが " Certains voudraient qu'Anne Hidalgo soit candidate à léléction présidentielle de 2022 "、当面は、環境保全を信条として、批判を浴びつつも環境破壊と闘っているとのことでした。

* * * * * * *

ところで今回のテキストは " Inclusive ( 包括的 ? )" な綴りになっていました。どういうことかというと、candidat/candidate, son nouveau maire/sa nouvelle maire などと男性形だけでなく女性形も併記されていました。多様性を排除しないように…ということの一環だと思います。たとえば 人権は " les droits de l'homme " ではなくて "les droits humains " とするという風に。アカデミーフランセーズや一部の公的機関はこの Écriture inclusive な表記には後ろ向きだそうですが、今後はどうなっていくのでしょう…。

© A la page 2021    Edition ASAHI

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上級

今週は『Zazie dans le métro 地下鉄のザジ 』の第四回目。

ラ・カーヴの店主のテュランドは、シャルルの話しを聞いて、「そういう品のない娘はごめんだな」と渋い顔。

* * * * * * *

一方、ガブリエルのアパルトマンでは、「夕飯ができたわよ」と、ガブリエルの連れ合いのマルセリヌが皆に声をかけます。ザジはお腹がすいているのですが、気のないふりをして席につきます。ブイヨンスープ、ブーダン、フォワ・グラ(これはガブリエルが勤め先からくすねてきたもの)、デザート、コーヒー…と食事がすんだところで、、タクシー運転手のシャルルはふたたび仕事へ。

そろそろ寝る時間だと、ガブリエルがザジに就寝をうながします。しかし、誰が ? なんで ? とあれこれ理屈をこねます。この年で、これだけ口がたつなら学校に行く必要もないんじゃないかね…とガブリエルがうなっていると、ザジはすかさず「私は65歳まで学校にいたいの」といいます。理由は先生になって子供たちをいびるのだと言います。どうするかというと、生徒に床をなめさせる、黒板ふきを食べさせる、コンパスをお尻に突きさす、長靴しかもギザギザの拍車のついた長靴でお尻をける…。ザジの言いたい放題は止まりません。

これに対してガブリエルは、今時の教育は優しく、穏やかに、理解を示しながらやるもんだ、と諭せば、それならあたしは宇宙飛行士になって火星に行く。そして火星人をいびる ! とザジ。

この子(ザジ)の思いつくことが半端じゃないな、とガブリエルは膝を打ちます。 当のザジは、まだ寝ないといい、テレビがみたい、テレビがだめなら映画だと言いながらも、あくびをし、自ら「もう寝る」と白旗をあげます。次回はp32 " Marceline l'accompagne dans sa chambre et... " からです。

© "Zazie dans le métro ", Raymond Queneau, Folio

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2021年6月29日

初級

今回も François Boucher フランソワ・ブシェ" Diane sortant du bain ( 水浴のディアナ ) "。テキストのつづきを読みました。

猟犬に追われるアクテオン (ガゼルタ宮殿)

猟師のアクタイオン Actéon は、沐浴を終えたばかりのディアナの姿を見てしまいます。ディアナは怒り、アクタイオンを鹿の姿に変えてしまいます " La déese se fâcha ...elle transforma le chasseur en cerf... "。そのためにアクタイオンは自分の猟犬たちに食べられてしまいました "...le malheureux ( le chasseur = Actéon ) fut dévoré par ses prorpres chiens. "。

オウィディウスの『変身物語』がこの絵のもとになっているそうです。

© Au Musée du Louvre, Editions Asahi

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中級

今週のタイトルは『 L 2 1 4 』です。

私達はさまざな家畜・家禽を食していますが、その飼育や輸送、屠殺がいたましい状況でなされていることがあります。L214 は動物擁護団体で、そうした動物にたいするひどい扱いをなくすために活動している団体です。L214 という名前は Code rural et de la pêche maritime ( 農事漁業法 ) の第 214 条 に由来するそうで、1976年にはじめて、この第 214 条 に「動物が知覚も感情ももつ動物である」という項が加えられたのだそうです " l'article L214-1 du Code rural... reconnaît pour la première fois en 1976 les animaux comme des êtres sensibles "

L214 は ■ 家畜の置かれた現状を調査や撮影などをして実態を知らせる ..."l'association L214 enquête et diffuse des vidéos d'animaux maltraités " 、■ 事業者や企業と対話する、■ 司法・立法へ働きかける、■ 食習慣の再考をうながす…
そのような活動をしているようです。 L214 の撮った映像には目を伏せたくなるものもありますが、現実であることは間違いありません " Ces images sont difficiles à regarder...mais, malheureuement, ce sont des images bien réelles. "

© A la page 2021    Edition ASAHI

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上級

今週は『 Le chapeau de Mitterrand ミッテランの帽子』の第 4 回目です。

ミッテラン大統領のいるとなりのテーブルには、キノコ入りのパテやらカキ、サーモンが運ばれてきます。大統領が注文したワインはダニエルとおなじプイイ・フュイセ。ダニエルがカキを酢につけていると、ミッテラン大統領の「そのことはヘルムート・コールに言ったんだが、先週…」という言葉が聞こえてきます。ダニエルは思いました。これからずっと、カキを食べるたびにこのセリフが頭に浮かぶだろうなあと。

となりのテーブルの歓談はつづきます。ミッシェルと呼ばれるもう一人の会食者は、別荘のワイン蔵が自慢。ワインだけでなくソーセージやら世界中の葉巻も貯蔵しています。あっ忘れないようにとミッテラン大統領が黒革の手帳をとりだし、電話番号をデュマ氏にメモさせます。続いてミッシェルが人のうわさ話しをはじめます。それまで聞き耳を立てていたダニエルは、なぜか自分もこの会話に加わっているような錯覚を覚えます … … … 「どう思うかね、ダニエル君」。そう問う声さえ聞こえてきました。ダニエルの答えはミッテラン大統領をひどく感心させたと見えて、大統領はしきりと頭を前後にふっています。デュマ氏やミッシェルまでも、「その通りだ、ダニエルのいう通りだ」と声をあげます。

ダニエルとミッテラン大統領は共に、白ワインのプイイ・フュイセが好み。そればかりか、かの赤いドレスの女性に視線が動くという点でも、手帳が黒革であるという点でも、ダニエルと大統領は気心がつうじる仲…もはやダニエルと大統領は、両腕を後ろ手に組んでゆったりセーヌ河沿いを散策しながら、世界の情勢を語り、時に沈む夕日を愛でる仲になっていました…。

「お困りのことはございませんか… ? 」 ボーイの声ではっと我にかえるダニエル。

ミッテラン大統領と 2 人の連れがやって来てからはや 2 時間と 7 分 。3 人は席を立ち、そしてブラッスリーから去っていきました。
次回は p26 " Les événements importants de nos vies sont toujours le résultat d'un enchaînement de détails infimes" からです。

© " Le chapeau de Mitterrand ", Antoine Laurain, J'ai lu

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2021年6月