ホーム     >>   教室の記録など

   
  

2021年7月6日

初級

今回は最終課の第14課。ドラクロワ Eugène Delacroix の『 la Liberté guidant le peuple ( 民衆を導く自由の女神 ) 』を観ます。いつものとおりまずは文法。接続法です。

ドラクロワ
コンスターチノープルを包囲する十字軍

接続法は…現実そのものを述べるのではなく、「かくあらねばならない事」とか、「そうあって欲しい事」を述べるときなどに用いられます。また話している人が嬉しかったり、心配だったり…と話し手の気持ちが色濃く出るときにも用いられます。それ以外の用法はまた別の機会に

♠  Il faut qu'il parte tout de suite.
   あの人、すぐに出発しないと
♠  Je veux qu'il parte tout de suite.
   あの人にすぐに出発して欲しい
♠  Il n'est pas certain qu'il parte tout de suite.
   あの人がすぐに出発するのかはっきりしていない
♠  Je suis triste qu'il parte tout de suite.
   あの人がすぐに出発しまうなんてさびしい

© Au Musée du Louvre, Editions Asahi

TOPへ
 

中級

今週は8課 『 Le vrai camembert 本物のカマンベール 』です。

「カマンベール・ド・ノルマンディー」。ご存知、ノルマンディー地方のカマンベール村で作られているチーズです。人口が200人にも満たない小さな村ですが、そのチーズの製法は18世紀から変わらないそうです。凝固しはじめた牛乳を柄杓ですくっては、丸い型に入れていきます。牛乳は熱処理せず生乳を用いますし " Le vrai camembert ... est fabriqué ... avec du lait cru et en le moulant à la louche "、牛の産地も限定されています。

「カマンベール・ド・ノルマンディー」は、AOP (Appellation d'Origine Protégée 原産地保護名称) が適用された商標です。ですので村の伝統的な製法にのっとったチーズのみが、この名をつかうことができます。

ところが近年、工場で量産されているチーズにも「カマンベール・ド・ノルマンディー」の名を付けたいという要望が出てきました。量産されるカマンベールは製法が違います。生乳ではなく低温殺菌した牛乳 du lait pasteurisé が原料ですし、柄杓も使いません。しかも安価。ですので市場に出まわるカマンベールの95%が、こちらのカマンベールです。

幸いこの要請はしりぞけられました " Heuresement cette demande a été rejetée." 。本当の「カマンベール・ド・ノルマンディー」の伝統が守られました。

ところで、「カマンベール・ファブリケ・アン・ノルマンディー Camembert fabriqué en Normandie 」という名のチーズも出回っていました。" ノルマンディーで作られたカマンベール " という意味の呼び名ですが、2021年1月にこの名の使用も禁止されたそうです。

© A la page 2021    Edition ASAHI

TOPへ

上級

今週は『Zazie dans le métro 地下鉄のザジ 』の第五回目。

ザジはメルスリヌに優しくいざなわれて寝室にむかいます。ガブリエルは早速、夜の仕事のために爪のお手入れを始めます。春歌を口ずさみながら、まずは小指からです。

「すぐに眠ったわ」と戻ってきたメルスリヌと、明日の午前中をどうするか相談します。ガブリエルは夜の仕事を終えたら寝たい…しかし子供はとかく早起き…さてどうするか、そういう相談です。

そこへ大家で且つラ・カーヴの店主のテュランドが、オウムを連れてやってきました。テュランドは、とかく「オケツー」を連発するザジのことが気に入りません。曰く「アパルトマンを貸したのは、ガブリエとメルスリヌに子供がいないからだ、私に許可なく子供を住まわせ、しかもその子供が小さいくせしてあばずれときている…」。

これを聞いたガブリエルは腹をたて、拳骨でテーブルをたたきます。テーブルは2つに割れ、オオウムの籠が落ちるは、爪の手入れ道具が床に散らばるは…。そこへザジが「まったくもう、眠れないじゃない」と起きてきます。初対面のテュランドに雑言を吐きますが、テュランドも負けじと応じています。ガブリエルはそろそろ仕事に行かねばなりません。ザジを寝室に行かせ、テュランドにおひきとり願ったところで、ガブリエルも出かけます。階段をくだっていると、マルセリヌが上から呼びかけます。「ねえ、口紅をわすれてったわよ」。
次回は、p39 の " Comme ça Zazie serait pas dépaysée. " からです。

© "Zazie dans le métro ", Raymond Queneau, Folio

TOPへ

2021年7月13日

初級

ドラクロワのピエタ

今回も第14課。接続法の続きです。

ゴッホのピエタ

接続法にはいくつかの用法がありますが、その中の一つに主節のないものがあります。「~であって欲しい、~して欲しい」という時に使います。たとえば…、

  • ドアの向こう側で誰かかノックしたら…Qu'il entre. (お入りください)
  • 出ていってほしい人がいたら、Qu'il sorte. (彼には出ていってほしい)
  • 「みな動いちゃダメ」と言うのなら Que personne ne bouge.
とこんな具合ですが、文頭の Que を省略するケースもあります。たとえば…
  • Soit le triangle. ( ここに三角形があるとします。)
  • Vive le dimanche ! (日曜万歳 ! )
Vive le dimanche ! は que が省略されているうえに、主語の le dimanche と動詞の vive とが逆になっています。もとをただせば Que le dimanche vive 。


さらに接続法の動詞だけ ! という用法もあります。Soit です。「そういうことにしましょう、まあいいでしょう」という意味。

  • Vous voulez le faire ? Soit. Faites-le. ( そうしたいのですか。まあいいでしょう。なさい。)


© Au Musée du Louvre, Editions Asahi

TOPへ
 

中級

© Jacques AZAM

今週は9課 『 Le manque de sommeil 睡眠不足 』です。

睡眠をけずってでも時間が欲しい私たち。ついつい横になる時問が遅くなりますが、昨今では床についてもインターネットの画面から目が離せない…などということがあるようです Une fois dans le lit... ... ...ils surfent sur internet 。睡眠時間が短くなるばかりか、睡眠の質にも影響するようです L'utilisation des écrans avant de dormir réduit le temps de sommeil, bien sûr, mais elle altère aussi sa qualité "

深い眠りはレム睡眠 ( le sommeil profond et lent ) というそうですが、記憶力を高めたり、老廃物をとりのぞいたりするのだとか。もう一方の浅い眠り ( ノンレム睡眠 = le sommeil paradox ) は創造性を育むようです " le sommeil paradoxal favrise la créativité 。いずれにしても、「眠りは人生の3分の1を占める大切な活動 " ...dormir est une activité très importante : nous dormons un tiers de notre vie ! "とのことでした。まさしく…。

© A la page 2021    Edition ASAHI

TOPへ

上級

今週は『Le chapeau de Mitterrand ミッテランの帽子』です。

ダニエルは思います。とんでもないことが起きたと。軽いめまいをおぼえ、目をつむります。首の骨をぽきぽきと鳴らそうと、左手を上にあげました。手が背後のバーに触れます。同時になにか柔らかいものにも触れました。手の重みで軽くへこみます。ダニエルは見上げました。

ミッテラン大統領のフェルトの帽子でした。大統領の忘れものです。

ボーイを探しましたが、周囲にいません。支配人を呼んで「隣の方が帽子を忘れたようだが」とでも言えば、うやうやしく礼を言われるかもしれない…そんなことも考えました。しかしダニエルはなぜか手を伸ばし、黒いフェルトの帽子をつかむと、そのまま下へ降ろし両ひざの上にのせました。時問にしてせいぜい3秒半。こめかみも心臓もばくばくしています。大統領のガードマンが戻ってくるのでは… ? 店に電話がかかってきてボーイが帽子を捜しに来るのでは… 。 そうなれば膝上にかくした帽子のことをどう弁解すればよいのか。

一刻も早く、支払いをすませて店を出ねばなりません。コートをはおり、襟をたてて、帽子をかぶります。ぴったりです。出口に向います。「すみません、お客様、その帽子は...」--- そう呼びとめられることもありませんでした。チップをはずんだせいか、ボーイは頭を深く下げ、支配人はロ許をおもいきり上げてほほえみ、ダニエルのためにトアを開けます。車に戻ったダニエルはバックミラーの角度をかえ、帽子姿の自分をしばし眺めます。自宅にもどっても、スイッチの入っていないテレビに映る自分の帽子姿に見入っています。どういう訳か、ダニエルには自分が蘇ったかのように感じられるのでした。次回は p31 " Dans le récit de sa soirée, il ne s'était accordé qu'une légère modification..."

© " Le chapeau de Mitterrand ", Antoine Laurain, J'ai lu

TOPへ

2021年7月20日

初級

今回はドラクロワ Eugène Delacroix の『 la Liberté guidant le peuple ( 民衆を導く自由の女神 ) 』のテキストを読みました。

1830年7月27日、パリで人々が蜂起します。王(シャルル10世)はプロイセンに逃げ、王政はついえ、革命は終わります。わずか3日で市民が勝利しました。この革命が「栄光の3日間」と呼ばれる所以です。

ドラクロワはこの「3日間」の直後に『民衆を導く自由の女神』を描きはじめたそうです " Delacroix a exécuté le tableau au lendemain de ces trois ( journées ) glorieuses " 。三色旗をもつマリアンヌの横に書生の身なりをしたドラクロワ自身が描かれています " Il se représente lui-même dans le tabeau en costume d'étudiant "

堅牢な構図は、古典主義の最高峰の作品を彷彿とさせるのだそうです "...sa solide composition rappelle les meilleures peintures classiques " 。しかしこの作品はまさしくロマン主義の絵 " C'est par excellence un tableau romantique "。ドラクロワは、政治においても芸術においても革新の人であったようです " C'est un peintre révolutionnaire en politique comme en esthétique "

* * * * *

今回で『ルーヴル美術館』は終了です。初級のテキストながら、とても読みごたえがありました。次回からはあらたなテキストです。とても易しいテキストです。その分、おおいに応用を…という意気込み ( ? ) です。

© Au Musée du Louvre, Editions Asahi

TOPへ
 

中級

今週は9課 『 Kenzo Takada 高田賢三 』です。

高田賢三氏は1939年生まれ。神戸の大学で学んでいましたが、文化服装学院が男性にも門戸を開いたことを知り "...il apprend qu'une école de mode à Tokyo est devenue mixte "、すぐに大学をやめ服飾を学び始めそうです " Il abandonne sur-le-champ ses études...et décide d'intégrer l'école Bunka Fashion College "。後に渡仏。すぐにではありませんでしたが、徐々に頭角を現します。鮮やかな色調と異国のモチーフで、当時のクラシカルなパリのモード界に新風を巻き起こしたそうです。

1970年にブティック「ジャングル・ジャップ」(後のケンゾー)をオープンしてから30年、モード界をけん引する一人であったそうです。2021年10月にコロナウィルスで他界されました。合掌。

© A la page 2021    Edition ASAHI

TOPへ

上級

今週は『Zazie dans le métro 地下鉄のザジ 』です。

メルスリヌはザジに里心がつかぬようにと、わざわざ田舎風の洗面所をしつらえます。しかしザジは「こんな原始的な洗面所なんて」と、まともに身づくろいもせず寝室を抜け出します。

静まりかえったアパルトマンを抜き足差しで巡り、ドアを開けてみればなんとそこは洋式トイレ。洗面所はこうでなくちゃとばかりに、気分よく中に入り、たっぷり15分程過ごします。

トイレを出た後に見つけたドアは、どうやら外に出れるドアのよう。そうっと開けてみれば案の上、階段に出ました。2 階に降りてみます。ガブリエルもメルスリヌも起きてきません。更に1 階に降りてみます。異状なし。いよいよ通りに出ました。パリは広いのです。見てまわらねばなりません。ザジは意気揚々と歩きはじめます。

が、階下のビストロにいたテュランドがザジに気づき声をかけます。「おいおちびさんどこに行くんだい ?」ザジは答えません。少々足をはやめます。テュランドは、店からとび出しなおも声をかけます。ザジは通りのかどを最短コースをとって駆けぬけます。しかしテュランドも猛追。とうとうザジは腕をつかまれます。

迷うことなく、ザジは叫びます。「助けてー、助けてー」。にわかに周囲の通行人らの視線が集まります。功を奏したと踏んだザジは、更に続けます。「知らないおじさんが、私をつれていこうとしている~、行きたくない~」。ザジとテュランドのまわりに人垣ができました。「この子が家をぬけ出したので両親のところに連れていくんです!」とテュランドは胸をはります。しかし周囲の視線から自分が著しく形勢不利であることをさとります。

そしてザジはあろうことか「このおじさん、私に変なことを言うの...」などと叫びだす始末…。
次回は、p43 の " Le cercle ricane avec un scepticisme déjà solidement enré. " からです。

© "Zazie dans le métro ", Raymond Queneau, Folio

TOPへ

2021年7月27日

初級

© Studio ESILAB

今回から Maestro 2 という新しいテキストブックを用います。前テキストと趣向がおおいに変わりました。どうやらテキストをあまり見ずに「聴いて、話す」ことが主眼になりそうです。

届きそうにない
---僕も

たとえば "Moi aussi" と "Moi non plus" 。どちらも「わたしも」ですが、話し相手の言ったことに応じて、両者を使い分けます。テキストは見ずに耳で聞き、即答…そんな練習でした。次の「私も」には何を入れましょう ?

  • Je n'ai pas du tout peur! --- (私も)
  • J'ai froid. --- (私も)

© Maestro 2, Editions Asahi

TOPへ
 

中級

© Jacques AZAM

今週は11課 『 Le coronavirus コロナウィルス 』です。

2020年の年明け、重度の呼吸障害を起こす病気がひろがり始めました。未知のウイルスが原因。WHO はこれを Covid-19 ( Corona + Virus + Disease + 2019 ) と名付けました。 潜伏期間は 2 週間 " Sa période d'incubation peut durer deux semaines "。感染した人に症状が出ていなくても、別の人に感染させることがあるため "...une personne malade peut contaminer d'autres personnes avant d'avoir elle même des symptômes "、ひそかにひろまる病気でもあります "...cette maladie est sournoise...

窓辺から医療従事者に
感謝を伝える人達

フランスでは 3 月 17 日から 5 月 11 日まで、外出禁止令が出されました。病院に行く人、テレワークができない人、買い物をする人などは外出可能ですが、許可証が必要でした。許可なく外出し場合には、約1万5千円の罰金が課されました。再犯の場合は 2 万数千円" En cas de sortie injustifiée, l'amende était de cent trente-cinq euros, deux cents en cas de récidive" 。摘発数は 100 万件を上回ったそうです。

TV5 のニュース欄にこんな見出しがありました。" Covid-19 : le variant Delta met fin à l'insouciance estivale, les restrictions s'étendent "。 夏にむけて活動の制限がとかれるのでは、という見方もありましたが、デルタ変異株による感染の広がりは楽観視を許さないようです 。

© A la page 2021    Edition ASAHI

TOPへ

上級

今週は『Le chapeau de Mitterraind ミッテランの帽子』です。

翌日、ダニエルは昨晩のビストロでの出来事をヴェロニックに語ります。あのゴージャスな海の幸の料理については、少々ひかえめに伝えました。そうでないとヴェロニックがやきもちを焼きますので…。ミッテラン大統領が隣席にやってきたことももちろん話しました。ダニエルの話しぶりはなぜか厳か。

「でも、大統領の帽子を持ってきてしまうなんて…あなたらしくない…もっと早く気づいて返したら喜ばれたでしょうに…」とヴェロニックの反応は少々さめています。が、ダニエルは意に介しません。どういうわけか、帽子はダニエルに自信をもたらすのです。

そしてその翌日。本社のデモワヌ専務も同席しての、財務課全体会議です。

会議中、ダニエルは新任のマルタル部長の方針に一つ一つ論拠をあげて批判をしていきます。同僚は皆ぽかんと口を開けたまま。ダニエルの弁舌が終わると、会議室は長い沈黙につつまれました。男性職員はみな口をつぐんでいます。が、一人ミシェルが「私は、ダニエルが私達の懸念を要約してくれたと思います」と述べるや、誰もが「しかも見事に…」とダニエルに加勢しはじめました。

会議は専務の一声でお開きになりました。持ち場にもどった同僚たちは、ダニエルを取り囲みます。皆、新任部長のやり方に承服できずにいましたから、ダニエルが沈着で明晰な弁士であることを発見して大興奮。ダニエルはにわかに起きた大変化に目をぱちくりしながらも、そっと帽子の縁をなぜます。

次回は p34 " Ils lui parlaient de son calme, de son assurance, et..." からです。

© " Le chapeau de Mitterrand ", Antoine Laurain, J'ai lu

TOPへ
2021年7月