初級

前回は、アレ山々 les Mots d'Arré の人工湖には、地獄の門があるという話しでした。この人工湖には アンクー Ankou という「死」の従者がいて、死者の魂をカマで切りつけて荷車にのせ、地獄の門へつれていくのだとか。こうして死者は悪魔にひきわたされるのだそうです "Il vient chercher les âmes des hommes décédés et les emmène à la porte de l'enfer pour les remettre au diable "。
しかしアンクーには、一人だけ悪魔にひきわたすことができなかった死者がいるそうです。ジャック・オ・ランタンです。生前に悪事をはたらき地獄にも行けなかったために、行燈をもってさ迷い歩くはめになったとか。この行燈、ハロウィンでお馴染みになっているようです(?)…。
ところで人工湖の畔にみえる建物は、1980 年代に完全停止になった原子力発電所。テキストのアンヌさんの言葉を引用します。Lorsque je suis ici, je ne peux pas m'empêcher de penser au drame de Fukushima. Pour vous, Japonais, en regardant cette ruine abandonnée à l'entrée de l'enfer, à quoi pensez-vous ? 「ここに来ると福島の惨事をどうしても考えてしまいます。地獄の入り口にあるこの廃墟を見たら、日本の人はどう思うのかしら」
どう考えるか、私たちは案内役のアンヌさんに答えないといけませんね。

© Esplanade 2 Editions Asahi
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中級

今回の第2課のタイトルは、「Cent-millions de touristes en France en 2020 ? (2020年には観光客を1億人 )」。
テキスト曰く、「海外からの観光客がこれまで以上に来てくれれば結構なことだが、長く滞在してもらえればなお結構 Accueillir plus de touristes internationaux, c'est bien ! S'ils séjournent plus longtemps..., c'est mieux ! 。パリ、コートダジュール、ロワール河沿いの城だけでなく、地方にも行ってもらいたい…。パリの観光客はニューヨークやロンドンほど、お金を使ってくれないので ...les visiteurs étrangers dépensent moins d'argent à Paris que (à)...New York ou Londres 、これは挽回する必要あり…。とにかく 2020年には、1億人の観光客をめざすが、2020年がだめなら2024年のオリンピックがある "...cent-millions de touristes,...ce sera...pour 2024 avec l'organisaton des Jeux olympiques à Paris !! 」と、意気軒高なテキストでした。
とはいうものの、このテキストが出されたのは、COVID-19 の感染が拡大する前のこと。大きな軌道修正を余儀なくされているようです。
経済のみを優先し過熱する
ツーリズムは surtourisme と呼ばれます
© A la page 2020 朝日出版社
上級
©Dreamstime
今週は " Le chien"、サミュエルの遺稿のつづきです。
「兵士たちが鉄条網越しに雪の球をなげると、犬はもんどりうって球をとらえた。しかし雪の球はすぐにくずれてなくなるので、犬はもう一回投げてと言わんばかりに吠える。この繰り返しだった。兵士たちは笑いながら犬と遊んでいたが、やがて鐘がなり犬をのこして持ち場に去っていった。
囚人が鉄条網のそばに近づくのは不用意なことだとは分かっていた。しかし私は犬の方に向かった。すわりこんでいた犬は尻尾をふり、満面の笑みをみせた。私はおもわず雪をまるめて投げた。犬は、軌道をえがいて飛んでいく球めがけて全速疾走し、飛びはね、雪をくだく。そして私の方に向きなおり、再び弾むようにして球を追いかけた。
©Dreamstime
やがて私の膝ががくりとおれた。私は雪のなかにひざまずき、体を二つに折った。熱い涙が私の頬をながれていた。頬が裂けるような熱い涙だった。私が泣いたのは一体何年ぶりか。喜びの涙だった。顔をあげると犬がじっと私を見ていた。私は微笑みかけたが、犬には分かりにくい答えだったようだった。腰をおろしたまま両耳をぴんと立てるのみだった。
私は犬のすぐそばまで歩み寄った。犬が鉄条網越しに鼻をつきだした。私の手のひらに温かい犬の息がかかり、湿ったやわらかい鼻先が私に触れた。私は犬にありがとうと言った。兵士が去った後、犬は、その兵士らとなんら変わることなく、私がなげる雪を追いかけた。犬は私と兵士を区別しなかった。犬が喜んでくれている様をみて、私はふたたび自分のなかに人間を見いだした。」
次回は p70 の Oui, dès qu'il m'avait regardé avec le même intérêt...からです。
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