2024年5月7日
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今週も第 10 課 『 Vivre à son rythme 自分のリズムで生きる 』です。テーマに合わせて France Info のテキストを読みました。こちらです。タイトルは " Apprivoiser la lenteur pour gagner du temps " です。
私たちは速さと即効性の時代に生きています Nous vivons à l'ère de la vitesse et de l'immédiateté が、その逆をいく運動が起きているそうです。イタリア発祥のスロー・フード le slow food やシタ・スロー ( スロー・シティ ) le Cittaslow という活動だそうです。
まず最初のスロー・フードは、ファースト・フードに対抗して生まれた運動で、私たちが口にするものは、生物の多様性や地域文化を大切にして作られたものであることを目指しているそうです。また後者のシタ・スローは、地域の開発の第一の前提を、住民の生活リズムの尊重に置いているのだそうです。
その他、スローを目指す運動としては、観光分野でのスロー・ツーリズム le Slow tourisme がありますが、それ以外にもなんと !! 金融分野でスロー・マネー・アリアンス le Slow Money Alliance という運動も展開されているのだそうです。
© T'en penses quoi ? Editions Asahi
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今週は、ミュエル・バルベリ Muriel Barbery の『優雅なハリネズミ L'élégance du hérisson 』です。
前回は、中学生の「私」が、人体や物体の美を追求したいと考えているくだりでした。そんな折、一人のラグビー選手が目にはいりました。激しくハカを演じている時も、インゴールめざしてして疾走している時も、その選手の動きにはまるでぶれがありません。身体と動きとが一体化して、「不動の動き(!)mouvements immobiles 」と化しているのでした。でも、この発見で感動していたやさきのことでした。試合中に一人の選手のショートパンツが脱げてしまったのです。観客席もテレビ観戦していた父も大笑い。美を追い求めていた私の精神は現実に引き戻されたのでした。
- - - 以上、第一節後半「この世の“運動“をつづる」終了- - -
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- - - 第二節「戦争と植民地」- - -
(管理人ルネの独白です)先に私は、学校を出ていないと言いましたが、小学校は出ています。10 歳にしてすでに読み書きは、とてもよくできていました。
私たちのセルヴァン先生は「戦争と植民地」にかんする日誌をつけていたのですが、私はそれをこっそり貪るように読んでいました。でもそれを人に気づかれぬようこころがけていました。とにかく目立つことは避けていました ...j'avias pris garde qu'on ne me remarque pas 。私が望むことはただ一つ。ほんのわずかでもいいので、一人静かに自分の「飢え」をみたす時間をもつことでした。
私は外に感情をあらわさない子供でした J'étais une enfant apathique....。ねこ背でもありましたし、一切のものへの興味を示すこともありませんでした。
それもそのはず、私は家で、名前を呼ばれることなく育てられたのです。呼びとめられる時は、大きな声だったり、所作であったり。食事はとっていましたし寒さはしのいでいましたが、食事も衣服も粗末でした。手荒くあつかわれたこともありませんでした。でも対話はなかったのです Chez nous...nous n'étions pas maltraités... ... ... nous ne nous parlions pas 。
そんななか、5歳の時でした。初めて幼稚園にいった日に、「ルネ」と人から呼ばれたのでした ...une voix s'adressait à moi et disait mon prénom 。その人は私の腕にやさしく手をかけました。手をかけるというのは私にははじめての意志の伝達方法でした。その声がやってくる方を見上げました。澄んだ目とほほえむ口元がありました。周囲が突如、色彩を帯びたのを覚えています。
次回は p46 の " En un éclaire douloureux, je perçu la pluie qui tombait au-dehors...からです。
© " L'élégance du hérisson ", Muriel Barbery , Editions Gallimard
2024年5月14日
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今週は第 11 課。タイトルは " Travailler 働く " です。
今回の舞台設定は、大学でのとある講演のようです。講師があつく働くことについて語っています。曰く、「職場はパーン・アウト burn-out (燃え尽き症候群) や ボーン・アウト born-out (退屈症候群) をしてしまう場所であってはならない」と。そして「仕事が苦痛と同義 synonyme de souffrance であってはならない」とも。
ですから氏は、なにがなんでも利潤を追求するシステム un système visant la rentabilité à tout prix や、永久に経済を成長させようという考え l'idée... d'avoir une croissance économique éternelle には疑問を投じています。
人の幸福は、一人当たりの PIB だけで推し測れるものではない "...je ne pense pas que le bonheur dépende uniquement du PIB par habitant " 、というのも氏の言葉でした。
© T'en penses quoi ? Editions Asahi
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今週は『影泥棒 Le voleur d'ombres 』です。
前回は、入院していたイヴさんが学校に戻ってきたところからでした。「僕」は昼休みにイヴさんのところに行ってみました。イヴさんは焼け跡を前にたたずんでいます。人を近づけさせない気配をただよわせていました。でも僕はイヴさんの背後にとどまっていました。するとイヴさんは、黒こげになったノートを手にして、このノートが自分の人生の全てだったと語って肩をふるわせたのでした。「でもイヴさんの記憶は燃えていないから、思い起こせばいい」と僕が伝えるとイヴさんは微笑みをとりもどしました。それから僕はイヴさんにたずねられました。「どうして燃えかけている物置小屋に私がいるのがわかったのかね」と。「イヴさんの影が僕のところにやってきて助けを求めたから」と本当のことを答えたかったのですが、そんなことを信じてくれる人はいないことがわかっていましたから、言葉をにごすよりしかたありませんでした。* * * * *
イヴさんは僕がなにかを言いかねているのを見抜いていました。「なにか胸につかえていることがあるなら、私に話してごらん。私のことを信頼していいのだよ Si...tu as quelque chose sur le coeur...sache que tu pourras te confier à moi... 」と言ってくれました。イヴさんに話せたらどんなに気持ちがらくになるか・・・そう思いながら僕はリュックのところにかけて行きました。
ガスタンクの爆発以降、教室の窓ガラスは全て入れ替えられました。が、暖房はなおりません。なのでみなコートを着て授業をうけていました。シェーファー先生は、房のついた毛糸の帽子をかぶっていて、先生がしゃべるたびにその房のボンボンが揺れるので (le) pompom...gigotait chaque fois qu'elle ( Mme Schaeffer ) ouvrait la bouche 、僕とリュックは笑いをこらえるのに必死でした。
マルケスとの仲はあいかわらず冷えきっていて、僕が学級委員の仕事をすると、マルケスの取り巻きが僕をはやしたりしていました。でも僕は、影のせいでマルケスの家のことを知ってからは、マルケスをうらむ気はなくなって、マルケスの嫌がらせもどうでもよくなっていました je ne lui en voulais plus de rien et toutes ses brimades m'étaient bien égales。
それよりも僕の頭をいっぱいにしていたのは、今度の土曜のことでした。午前中にお父さんが僕を迎えにきて、一日一緒に過ごすことになっていたからです。お母さんを一人にしてしまうのが、ちょっとうしろめたかったのですが je me sentais un peu coupable de l'abandonner 、お母さんはお母さんでやることがあり、むしろ嬉しそう。ですので杞憂でした。
おりしも前日の金曜日は、冬時間に移行する日でした Ce vendredi-là, on passait à l'heure d'hiver... 。ただでさえ、はやく土曜になってほしかったのに、一日の時間が一時間、増えるなんて。
夜はきっと寝られないかもと思いながら床につきましたが、案外眠れたようです。土曜当日、僕は早起きして、お母さんを起こさないよう、そっと台所でお母さんの朝食をつくり、そして自分の部屋にもどって服を着ました。フランネルのズボンに白いシャツです。友達のおじいさんのお葬式のときにきた服です。次回は、p77 の " J'avais pris quelques centimètres depuis l'année précédente... " からです。
© " Le voleur d'ombres ", Marc LEVY, Edition Robert Laffont
2024年5月21日
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前回につづき、第 11 課 『 Travailler 働くこと 』がテーマです。こちらの子供新聞を読みました。
子供新聞ですので易しいことばで書いてありますが、なかなか大変な内容でした。タイトルは「仕事がつらいというのはどういうこと ? Ça veut dire quoi, la " souffrance au travail ? "」です。職場の問題にくわしい精神分析医のマリー・プゼさんとのインタビューです。
プゼさんは、仕事がつらくなり、自分の仕事に意味を見いだせなくなるのは次のような時だと言います。仕事に必要なものがそろっていなとき、時間に余裕がないとき、過度な指示をだされるとき on ne lui ( une personne ) donne pas les outils dont elle aurait besoin,... elle ne dispose pas du temps nécessaire,... on lui demande de respecter des consignes trop strictes, 。
一方、プゼさんは映画 " Fatima " についても語ってくれました。小学校の教室の掃除をしているファティマという女性が主人公です。彼女は「毎晩教室をきれいにすることは、毎晩芸術作品を一つ仕上げているようなものよ C'est comme si je faisais une oeuvre d'art tous les soirs 」と語ります。プゼさんは、これは仕事にたいする矜持だと言っていましたね 。
© T'en penses quoi ? Editions Asahi
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今週は、ミュエル・バルベリ Muriel Barbery の『優雅なハリネズミ L'élégance du hérisson 』です。
前回は、アパルトマンの管理人をしているルネこと「私」が、小学生時代をふりかえるくだりでした。
私ははやくから読み書きができていました。もっと読みたい、もっと知りたいという渇望だけはありました。猫背で、不器量なのがわかっていましたから、とにかく目立ちたくない、一人静かにしていたいと、そんなことばかり考えていたのでした。家庭は、つましい生活でしたが、空腹はみたされ寒さはしのいでいました。でも会話がなく、名前を呼んでもらうことがありませんでした。ですので私は感情をおもてにあらわすことのない子供でした。
ところが、はじめて幼稚園に行った日に、先生から「ルネ」と呼ばれたのでした。私が見あげると、その眼と口元はほほえんでいました。その微笑みが私の胸にまっすぐと入ってきて、辺りが突如、色彩を帯びたのでした。
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先生は再び「ルネ」と私の名を呼び、「帽子をぬぎましょうね Renée... veux-tu enlever ton surtoît ? 」と促し、私が倒れぬように、私の腕にそっと手をそえてレインコ―トも脱がせてくれました。
先生はいわば、私に名前を与えてくれた人でした。私の意識を覚醒させた人でした。生まれてこのかた、当然ながら、私は知覚をもっていました。当たり前に、見たり聞いたり触ったりしていました。でも自分の周囲や自分自身にたいする意識をいだくことはなかったのです。なぜなら思うに、意識が生じるためには、名前がなければならなかったからです... pour que la conscience advienne, il faut un nom 。
「まあ、きれいなお目々ね」と先生は言いました。嘘ではないと私は直感しました --- Voilà de bien jolis yeux, me dit encore l'institutrice et j'eus l'intuition qu'elle ne mentait pas...。
私は名前を得て、あらたに誕生したのです。ですから、私の目はきっと輝いていたはずです。私は震えはじめていました。そして先生の目のなかに私と同じ喜びがあるに違いないと先生のやさしい目をみつめたのでした。でも、私がその目のなかに見つけたのは… … …同情だったと思います。このことは、後になって私が理解したことです。
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私は学ぶことに飢えていました。人とまじわることは私にはとうていできません。私は本を手にとり、こっそりを読んでいました。他の生徒たちがたどたどしくしか読めない頃から、私は文字という記号が無限につながることを知っていました ...je savais depuis longtemps...leurs (=les signes écrits ) combinaisons infinies ... 。
次回は p48 の " Personne ne sut. Je lus comme une forcenée, en cachette...からです。
© " L'élégance du hérisson ", Muriel Barbery , Editions Gallimard
2024年5月14日
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いよいよテキスト最後の課となりました !!! 第 12 課 「 Se connecter つながる 」です。
成人式を迎えた女性が、インターネット上に振袖を着た自分の写真をのせました。ところが…知り合いのおおかたは「いいね」を押してくれたのだそうです Mes connaissances ont globalement ' liké ' 。しかし知らない人たちから、はげしい批判をうけました。予想もしなかった批判の嵐に、その女性はいろいろ考えさせられたそうです。
曰く「他人から " いいね " やほめ言葉をもらうことを期待してました。人の言うことを気にしすぎていました ...je me suis aperçus que j'avais... ... ... ( accordé ) trop d'attention au qu'en-dira-t-on 。インターネットやS N S ( ソーシャルネットワーキングサービス ) には良いところがたくさんありますが、依存してしまっていては、もともこもありません。一種の解毒治療 Une sorte de détox として、スマホからすこし離れることにしました」。
© T'en penses quoi ? Editions Asahi
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今週は『影泥棒 Le voleur d'ombres 』です。
前回は、学校の物置きが焼失し、イヴさんが失意にあったこと、そして冬の曇りの日が続いたために影におびやかされることがなかったこと、しかしマルケスとの仲はあいかわらず冷えきっていたことなどが語られていました。そんななか、とてもよい知らせが、お母さんからありました。次の土曜、お父さんが僕に会いにきて、一日一緒に過ごせるというのです。僕は待ちどおしくてたまりませんでした。時間が経つのがおそく感じられて仕方ないほどでした。そして当日の朝・・・。* * * *
僕は一張羅の服をひっぱりだしました。背がすこしのびた分 J'avais pris quelques centimètres 、ズボンの丈がみじかくなっていました。お父さんからプレゼントされたネクタイもしてみることにしましたが ...j'ai essayé de mettre la cravate que papa m'avait achetée...、結び方がわからないので、マフラーみたいに首にまくことにしました。こんなおしゃれな格好で、お父さんと散歩している時に、ばったりエリザベスを出会ったらどんなにいいだろうと夢想していました。
そして正午。
お父さんから、僕を迎えに来れない、済まないと連絡がありました。僕は電話にでませんでした。お母さんは僕以上に悲しそうでした Maman avait l'air encore plus triste que moi 。* * * *
月曜日。学校の中庭のベンチにすわっていると、イヴさんがやってきて「うかない顔をしているね。どうしたんだい Tu n'as pas l'air dans ton assiette, qu'est-ce qui t'arrive ? 」と尋ねました。僕の家の屋根裏にはたくさんの写真があつて、僕はそれを思い出としてアルバムにしたいと思っている、と答えました。
イヴさんは、僕の年で思い出づくりはまだちょっと早いのじゃないかな、と言って Yves...m'a dit que j'étais peut-être encore un peu jeune pour faire un album de souvenirs 、ほほえみました。
屋根裏にある写真は、全部、僕が生まれるまえの両親の写真です。僕は両親、特にお父さんのことが知りたかったのです。だからアルバムをつくろうと思ったのですが、イヴさんは知るよしもありません。「若ければ、これからすばらしい思い出ができる。子供でいられるのは素晴らしいことだ」とイヴさんは言います。でも子供時代だって、この前の土曜日みたいにうんざりすることがあるのです。* * * *
曇天つづきの冬が終わり、再び春がめぐってきました。リュックと一緒に登校するために、リュックのパン屋さんの前でリュックを待っている時のことでした。僕の足元に影ができました。まさしく僕の影でした。もう他の人の影を取りたくありませんから、とにかく一安心。
教室では、僕はずっとまえから一番前の席にすわっていました ...je m'occupais le premier rang de la salle de classe 。だからまったく気がつかなかったのですが ...je n'avais rien vu venir, rien entendu de leur (Elisabeth et Marquès ) complicité 、エリザベスとマルケスがすっかり仲良しになっていました。二人が手をつないでいるところも目にしました。僕は手のひらに爪がくいこむかと思うほど拳をにぎりしめたのでした…。
次回は、p83 の " Yves est venu me rejoindre sur mon banc. " からです。
© " Le voleur d'ombres ", Marc LEVY, Edition Robert Laffont