2024年1月9日
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今週は第 3 課の『 Restaurer 修復する 』です。
文化遺産を保存し修復するということは、どの国とっても歴史と文化を護るうえでとても大切です Conserver et restaurer le patrimoine culturel est essentiel... pour protéger l'histoire et la culture de chaque pays 。2019年の火災でおおくを焼失した首里城は、国が再建をきめましたし Il a ... été décidé de reconstruire le château de Shuri à, en grande partie détruit par un incendie en 2019 、歌舞伎座の建てなおしは民間が支援しました ....la reconstruction du Kabuki-za a été financée par l'entreprise Shochiku 。熊本城のときは多くの寄付が寄せられました。クラウドファンディング financement participatif も大きく貢献したのだそうです。
それでも歴史的な遺産の保護はまだまだ不十分です ...on peut mieux faire 。たとえば宮大工 menuisiers-charpentiers は知識と技を継承していく上で大切ですが、その数は著しく足りないのだそうです on manque cruellement d'artisans 。
© T'en penses quoi ? Editions Asahi
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今週は、ミュエル・バルベリの『優雅なハリネズミ』です。
前回は、12 歳の「私」のはなしでした。あらゆる面で恵まれた環境で暮している「私」は、周囲の大人たちを見て失望しています。真剣に死にたいと考えている…というそんな件でした。
* * *
私は日本びいきです。日本語の授業もうけています。先生はぱっとしません。もごもごと話すし、困ったような顔をして、 いつも頭をポリポリかいています "...il mange les mots en français et passe son temps à se gratter la tête d'un air perplexe" 。でも教科書がよいので、大好きなマンガがじきに日本語で読めるようになると思います。
母は日本のマンガを劣った文化とみていますが、それはまちがっていると説明するのも面倒なので、していません "...je n'ai même pas pris la peine de lui expliquer... et je ne la détrompe pas " 。とにかく6月16日までには読めるようにならなくてはなりません。6月16日は、私が死を決めた日だからです。苦しい死は望んでいません。死は一つの通過点です。穏やかにその通過点を通りたいのです。大人には理解されないでしょうし、「人生の大切さ」とか、いろいろなことを言って、私をおしとどめることはわかっています。
ですから慎重に準備をしています。死そのものや、何歳で死ぬかは問題ではないのです。谷ロジローのマンガの主人公はエヴェレストににいどみ命を落としました " Dans Taniguchi, les héros meurent en escaladant l'Everest " 。私には K 2 にいどむことも、グランド・ジョラスに登ることもできませんが、私は私自身のエヴェレストととして、自分の思考を深めることにいどむつもりです。そしてそれをノートに書きとめます。制約も課します。俳句もしくは短歌の形で記すのです。
Hutte de pêcheurs
Mêlés aux crevettes
Des grillons海士の屋は
小海老にまじる
いとどい哉私の好きな芭蕉の俳句です。日本の漁師の小屋は、私が住む世界より、ずっと詩情があります。
次回は p25の " Quand cet été on a entendu aux informations que ... " からです。
© " L'élégance du hérisson ", Muriel Barbery , Editions Gallimard
2024年1月16日
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今週も第三課の『 Restaurer 修復する 』がテーマです。子供新聞を読んでみました。
フランスでは 1984 年 9 月に、La Journée Portes Ouvertes という日が設けられました。普段は入ることができない歴史的な建造物を、訪れることができる日です...le jour où des lieux habituellement fermés au public ouvrent leurs portes " 。この催しは欧州にも広がり、今では「ヨーロッパ文化遺産の日」となりました。
そしてこの日は、特別な宝くじが発売される日でもあります。その収益は文化遺産の維持・修復のために使われます。2017 年に議会で可決され、2018年にはじめて発売されました。そしてその翌年からは 7 月 14 日の革命記念日にも、つまり年に 2 回、売りに出されるようになったそうです。
どの文化遺産を修復するかは毎年、決められるのですが、2023 年はガロ・ロマンの遺跡 Site archéologique gallo-roman や教会、城等々 18 箇所が指定されました。どのような建造物が修復されるのか、動画をご覧になってみてください 。
© T'en penses quoi ? Editions Asahi
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今週は『影泥棒 Le voleur d'ombres 』です。
前回は、知らぬ間に僕がマルケスの影をぬすんでしまったところからでした。何としても、影を返さねばなりませんが、そのためにはマルケスに近づいて、影と影を重ねあわせて自分の影とマルケスの影とを交換せねばなりません。そう考えると学校へ行く足どりは重くなります。見れば校庭にはマルケスと仲間が集っています。* * *
僕が近づくと「何か用があるのか Qu'est-ce que tu veux ? 」とマルサスがつっけんどんにたずねます。「咋日はありがとう」と答えると、「よし、礼は聞いた。だからもうあっちへ行け」とけんもほろろです。仲間たちもせせら笑っています。
でもこの時なにかが僕の背中をおしました。僕はひきさがらずに、三歩前に踏み出したのでした Je ressentis alors une force dans mon dos, une force qui me poussait à faire trois pas vers lui au lieu de me retirer...。「まだ何かあるのか ? Quoi encore 」とアルケスがすごみます。
なんとこの時、僕は「学級委員長に立候補することに決めた」と答えていました。皆、しーんとしていましたが、マルケスが沈黙をやぶりました。「それなら勝負だ。痛い目にあうのはおまえだからな」と。
次の休み時間、人生はもう長くない…と僕は落ちこんでいました。そんな時、パン屋の息子のリュックが僕に、おいでおいでの合図をします。リュックは夏休みに骨折したので、ギブスをして日影で休んでいたのでした。「さっきはすごかったね。見直したよ Je t'avias sous-estimé 」とリュックは言います。僕は「立候補するなんて、自殺行為だ」と返します。が「やってみなきゃ、わからないじゃない。僕は君の味方だからね ...je suis de ton côté 」とはげましてくれたのでした。
新学期に転校してきて以来、友達とこんなに話しをすることができたのは初めてでした。僕は、他の嫌なことすべてを忘れてしまいそうなくらい嬉しくなりました。
水曜日午後。立候補者の全氏名がはり出されました。アルケスと僕だけでした。
僕はリュックと一緒に帰ることにしました。僕の影が大きすぎることに、リュックが気がつかないか心配でしたが、杞憂でした。 道すがら、リュックは「チョコレートパンを食べたくない ? 」とたずねます ...il me demanda si un pain au chocolat me tenterait 。僕は「お金をもってないから・・・」と答えますが、目の前のパン屋さんを指して、「僕のお母さんは、おやつのチョコパンにお金をとったりしないよ Luc me dit que sa mère n'avait pas l'habitude de lui faire payer ses goûters " 」と笑うのでした。
次回は、p50の " Et devant mon air ahuri, il me rappela que..." からです。© " Le voleur d'ombres ", Marc LEVY, Edition Robert Laffont
2024年1月23日
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今週は第四課、タイトルは「 Etre vu(e) 視られる 」です。
1950 年代まで、フランスやベルギーの漫画には、女性が登場することはほとんどなかったそうです 。なるほど、たしかに、Astérix ( アステリックス ) や Les Schtroumpfs ( スマーフ / シュトルンフ )などではお見かけしませんでした (!) Concernant les bandes dessinées franco-belges, jusque dans les années 50, les personnages féminins sont peu nombreux, notamment dans les oeuvres ... ... comme Astérix ou Les Schtroumpfs 。描かれていたとしても、脇役だったり、茶化して描かれていたり…。タンタンに出てくるオペラ歌手の la Catafiore ( カスタフィオーレ夫人 ) はまさしくお騒がせで厄介な人物として描かれています。
一方、日本の漫画に出てくる女性のイメージはというと、少年向けの漫画ではとくに、純粋無垢な女性がかなり顕著だったようですDans le monde des mangas, l'image de la femme pure et innocente a souvent été véhiculée surtout dans les mangas 'shonen', à destination du jeune public masculin 。ナイーブで従順、そういう定型化された女性像がまだあるようです le stéréotype de la femme soumise ou des filles naïves est encore présent 。
とはいえ社会の変化とともに漫画界での女性像も大きく変化し、女性作家の進出も目覚ましいとのこと。たのもしい限りです。
© T'en penses quoi ? Editions Asahi
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今週は、ミュエル・バルベりの『優雅なハリネズミ』です。
前回は、12才の「私」が死をどう考えているかについてでした。死は一つの通過点でしかありません。死そのものも、いつ死を迎えるかも大切ではありません。そうではなく、死にいたるまでをどう過ごすかということの方が大切なのです ( ちょっとモンテーニュみたいです ) 。ですから「私」は一つの挑戦として、自分の思考を深め、それを大好きな俳句という形で書き残していこうと決心した…とそういうくだりでした。
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「私」はこんなニュースを聞きました。狭くて不衛生な住まいで火事がおき、住人が命をおとしたというニュースでした。その人たちはまさしく、私が俳句でうたった「金魚鉢の金魚」のように暮らさざるを得なかったのだと思います。ひるがえって、「私」のアパルトマンは 400 平米。家族は四人。皆、大海を自在に泳いでいると信じているようです ...mes parents et Colombe s'imaginent qu'ils nagent dans l'océan parce qu'ils vivent dans leurs quatre cents mètres carrés... 。
このことがきっかけで、「私」はベつの決心もしました。かの 6 月 16 日に、アパルトマンに火を放つのです Aolrs le 16 juin, ... je vais mettre le feu à l'appartement... 。ぼやで済むように周到に手はずを整えます。 6 月 16 日、両親は、家が焦げ、娘がいなくなったことを知ることになります。そうしたら少しは、粗末な住まいで命をおとした人たちのことを思ってくれでしょうか。
--- 序章「マルクス Marx 」の終わり ---
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第二の章「カメリア Camélias 」
第一節 「貴族 Une aristocrate 」(管理人ルネが語ります)マニュエラは私の唯一の友人です。飾り気がなく、優雅さを秘めた女性です。
火曜日には上階のアルタン家のアパルトマンから、そして木曜日にはやはり上階のドゥ・プログリ家から、私の管理人室に立ち寄ってくれます。一緒にお茶を飲むのです。彼女は20年間ずっと、他人の家の「埃をはらう仕事」をしてきました。でもその20年間が彼女から " 優雅さ " をうばうことはありませでした ...une femme ( = Manuela ) que vingt années gaspillées à traquer la poussière chez les autres n'ont pas dépouillée de son élégance 。お金持ちは「埃をはらう」と遠まわしに言いますが ...chez les riches, les choses ne s'appellent pas par leur nom 、その実、することをいえば、ありとあらゆる汚れをとりのぞくことです。アルタン家とドゥ・プログリ家の便器は金箔に覆われています。ですが、その汚れは、そこらのどのおトイレとなんら変わりません ...des chiottes dorées à la feuille qui, en dépit de cela, sont aussi malpropres et puantes que tous les gogues du monde... 。「綿棒を使って磨きあげるのよ」とマニュエラはおだやかに言います。
他人が鼻をつまんでそっぽをむくような仕事をずっと引き受けてきたのです。それでもマニュエラは洗練されたものへの愛を失うことはありません。
午後2時。ティータイムだってテーブルクロスは敷かなくては、とエマニュエラと言います。彼女持参のアーモンドクッキーをいただきます。深紅の薄紙をしきつめたかごに盛られたアーモンドクッキーをいただくのです。
次回は p23の " Quand je dis mon côté japonais, je veux dire mon amour pour le Japon ... " からです。© " L'élégance du hérisson ", Muriel Barbery , Editions Gallimard
2024年1月31日
- 中級
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今週もマンガがテーマの第 4 課。文法のおさらいを少々しました。
それと、" T'en penses quoi ? ( どう思います ? ) " のコーナーに挑戦。" T'en penses quoi ? " ( どう思います ? ) のコーナーでは、たとえばこんな問いがありました。
♣ " Parmi les manga ou livres que vous avez lus récemmemnt, est-ce qu'il y en a qui vous ont fait réfléchir sur le statut de la femme ou sur la question du genre ? "
今読んでいるマンガや本で、女性の立場やジェンダーについて考えさせてくれたものはありますか ?♣ " Est-ce que vous pensez que la société nous demande d'être 'viril' ou 'féminine' ? "
「男らしさ」や「女らしさ」が社会から求められていると思いますか ?腕組みをして、う~んとうなりました…。でも、どんな答えでもよいのです。問いをきっかけに話してみることが大切…かなと思います 。
小説からBD化した
" Au revoir là-haut"
© T'en penses quoi ? Editions Asahi
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今週は『影泥棒 Le voleur d'ombres 』です。
前回は、「僕」がなにかに押されるようにして、学級委員に立候補することを宣言したところからでした。結果、マルケスから宣戦布告されたことはいうまでもありません。でも休み時間に、僕を応援してくれる友達に出会いました。パン屋の息子のリュックが「やるじゃない。見なおしたよ」と声をかけてくれたのでした。下校もリュックと一緒。帰りがけにリュックのパン屋さんに立ち寄ることとなりました。* * * *
僕はリュックと一緒にお店に入りました。ブリオッシュみたいにふくよかなリュックのお母さん Sa maman était ronde comme un brioche が僕たちを迎えいれてくれました。いただいたおやつはチョコパンとコーヒー味のエクレア。リュックのお母さんは「パンを窯から出してくるからお店を見ててね」と言って出て行きました。
リュックはレジのうしろのスツールに坐っています。それを見て、僕は20年後の自分を思いえがいていました Soudain je nous imaginais avec vignt ans de plus 。お医者さんかなにかになった僕が、パン屋にはいると、そこには20歳年をとったリュックがいて、抱き合いながら再会を喜んだ...je reconnais mon vieux copain d'école...on tombe dans les bras l'un de l'autre...・・・というそんな夢想でした。
陽が落ちる前、僕は家にもどり、しばし庭でマルケスの影を観察しました Arrivé à la maison, j'ai foncé dans le jardin pour étudier le phénomène de plus près. 。他人の影を持っているなんて、実に奇妙で気がやすまりません。リュックのパン屋で20年後の自分を夢想した時もそうでしたが、体にくっついたマルケスの影と、自分の体のこととが、妙に頭にひっかかって仕方ありません。ですから僕は決心しました。
夕飯後、お母さんがテレビを見ているあいだ、僕は意を決して屋根裏部屋にのぼることにしました。「怖いものには、立ち向かわなければ成長できない」とお父さんは言っていました。だから僕は、満月の夜に月明りがさし込む屋根裏部屋に行くことにきめたのです。
次回は、p53の " Là-haut, c'était mon monde à moi. Mon père n'y allait jamais......" からです。© " Le voleur d'ombres ", Marc LEVY, Edition Robert Laffont