2023年3月7日
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今週は 20 課。最終課です。タイトルは『ミシュリーヌ・オステルメイヤー、アスリートにしてピアノの名手 Micheline Ostermeyer, athlète virtuose 』です。
ミシュリーヌ・オステルメイヤーは 1922 年生まれ。ピアノの名手だったそうです。1946 年には、パリのコンセルヴァトワール ( Conservatoire national supérieur de musique et de danse de Paris : 国立高等音楽・舞踊学校 ) をプルミエ・プリ (一等賞) で卒業。その後は各国でコンサートをこなしていました。
しかしミシュリーヌ・オステルメイヤーがけたはずれなのは、彼女が音楽ばかりでなく、スポーツにも優れていたことでした。なにしろコンセルヴァトワールを卒業した 3 ヶ月後にはオリンピックに出場。しかも出場種目は一つではなく、高跳び saut en hauteur、砲丸投げ lancer du poids 、円盤投げ lancer du disque 。そのいずれの種目でもメダルをとっているのです。
そして、そのメダルを取った日の夜には、ロイヤル・アルバート・ホールでベートーベンのリサイタルをひらいていたとか "...elle joue le soir un récital de Beethoven au Royal Albert Halla de Londres " 。ただただ驚くばかりですね " C'est simplement extraordinaire " 。
© A la page 2022, Editions Asahi
© 2023 Comité International Olympique - 上級
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バスキア
今週は『Le chapeau de Mitterrand ミッテランの帽子』です。
3杯目のシャンペンをのみ干したベルナールは、初対面の相手に実にペラペラとよくしゃべっていました。相手は画商で、その画商が重々しい声でまるで判決をくだすかのようにベルナールにたずねます。「ジャン・ミシェル・バスキアをご存知だろうか」と " L'homme...avait lâché cette sentence d'une voix grave. Vous connaissez Jean-Michel Basquiat ? " 。「彼の作品はまだ手ごろな値段だ」と言ってギャラリーの名刺を渡してきました " Il est encore accessible, voici la carte de ma galerie " 。
そこへあらたに二人が加わり「またバスキアの話しをしているのか」と画商を冷やかします。どうやら学芸員らしく、画商と丁々発止の美術談議をしています。この間べルナ―ルは自分の家にある先祖のコレクションを思いおこしていました。いずれもさえない代物で、マネもなければ、ルノワールもありません。印象派の絵が一枚でもあれば、一生の稼ぎをはるかに越える値をつけていたに違いないというのに… "...un seul Monet...valait aujourd'hui cent fois le patrimoine qu'il avait accumulé sa vie durant " 。
突如、ベルナ―ルはシャンペンを飲み干し、「バスキアを今すぐに購入したい ! 」と述べます。周囲は呆気にとらています。ベルナールが、同じせりふをくり返すと、画商は「車を持ってきますから、ちょっとここでお持ちを」と去っていきました。
「安くない買物だが、もしもの時は、祖先が残してくれたアパートを売りさえすればいい "...ce n'est pas donné, certes, mais...au bosoin, il vendrait un des petits appartements de l'aïeul "・・・こんないい気分になるのは、なんと久しぶりのことか・・・」。
こう、つらつらとベルナールが考えていると、おなじマンションに住むジャンが戻ってきました。一人にさせて申し訳けないと詫びつつ「退屈していなければいいけれど」と言うので、ベルナールは答えます。「ちっとも。絵を買うことにした」と。「それはすごい」とジャン。感嘆しつつ再び去っていってしまいましたが、あたりを見れば、なんと ( かのかつては文化大臣だった ) ジャツク・ラングが近くいるではありませんか。ベルナールは声をかけてみました。そしてあのビュランのコロンをたたえます。気分をよくしたジャツク・ラングは、ベルナールの腕をとって、「創造の力こそが、時代につよく働きかけるのだ」と熱く語りはじめるのでした !!次回は p153 " Deux joueurs de saxophone à lunettes noires et constumes de soie blanche jouaient des variations sur la chanson..." からです。
© " Le chapeau de Mitterrand ", Antoine Laurain, J'ai lu
2023年3月14日
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今週から嬉しいことに、新しいテキスト ( ! ) です。第 1 課のタイトルは『 La Ville Lumière 光の都市 』です。
夜のパリを散策すると歴史的な建物が明かりに照らされてとてもきれいです ネ 。パリが「光の都市」という異名を持っているのもうなづけます。
しかし 17 世紀のパリは真っ暗でした。犯罪が増え警官が街に出るのを怖がったというくらいだったそうです "On dit que Paris était un coupe-gorge et que la police elle-même avait peur de sortir...。そこで初代の警視総監のニコラ・ラレニが、何千ものろうそくのランタンを辻々に置かせたそうです。
ろうそくの明かりはやがて、油、ガスの灯りにかわりました。19 世紀なかばには、電気による明かりも試されました。が、ガス灯が姿を消して、完全に電気照明になるのは、1960年代になってからのことだそうです "...les dernières ( lanternes au gaz ) disparaissent dans les années 1960 seulement " 。
来週の火曜は春分の日でお休みです。再来週に " A la lanterne ( ランタンに !! ) " という ( 実は )恐ろしい表現についてのテキストを読んでみましょう。
© A la page 2023, Editions Asahi
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今週は『地下鉄のザジ Zazie dans le métro 』でしたが、お休みさせていただきました m(__)m 。
2023年3月28日
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前回は、パリを美しく照らす街灯にまつわるテキストを読みましたが、今回はその続きで " A la lantern "街灯に ! " という表現についてです。少し回り道をしますが、まずは「パリ市庁舎前の広場」について…。
パリ市庁舎まえの広場はかつてはグレーヴ広場と呼ばれ、セーヌ河岸までのびていていました。物資が陸揚げされる場所でしたが、同時に、14世紀から19世紀までの5世紀にわたって、罪人の処刑場でもあったそうです。
革命がおきたときは、貴族や王制に仕えていた人たちが処刑されました。広場にはルイ14世の胸像と街灯とがたっていました 。人々はこの街灯に貴族たちをつるして処刑したそうです。 " A la lantern " ( 街灯に ! ) " はその時に叫ぶ言葉だったそうです。 " Ah! Ça ira, Ça ira, Ça ira / Les aristocrates à la lanterne 貴族は街灯に ! そうすればうまくいく ! " というラドレ Michel-Louis Ladre 作の歌謡の一節が合言葉になったのだそうです…。
ちなみにグレーヴ広場の ' grève ' は今では「ストライキ」という意味ですが、もとは砂浜のこと。セーヌ河岸の砂浜に失業者が集まったことから今日の意味になったそうです ヨ。
© A la page 2023, Editions Asahi
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バスキア
今週は『Le chapeau de Mitterrand ミッテランの帽子』です。
前回は、ベルナールが、ジャク・ラングに声をかけたところで終わりました。ジャツク・ラングはベルナールの腕をとって「是非、私の運動 " Allons z'idées アロンズィデ" に加わりなさい」とすすめ、運動のステッカーをくれましたが、すぐに誰かにひっぱられて、この御仁、どこへともなく姿を消してしまいました。一方、セゲラは若者にむかって「金にはアイデアはない。しかしアイデアは金を生む」などと熱弁をふるっています。
ベルナールは画商のギャラリーに行くことになっていましたから、コートとをはおり、例のフェルト帽をかぶって会場をあとにします。
コンクリート打ちの現代的なギャラリーに着きました。到着早々、べルナールは、バスキアの絵はどうして美術館で展示されないのか、とたずねます。さき程のパーティー会場での学芸員との会話を思い出したからです。若いし、肌の色が黒く、ハイチ出身だから・・・というのが画商の答えでした。
画商がバスキアの3枚の絵を持ってきます。絵が見えないように後ろ向きに持ち、ベルナールに伝えます。「いいですか、目をとじて。天才の作品をお見せしますよ」。
18世紀の風景画で育ったベルナールにとっては、この 3 枚はまさに衝撃でした。体がかたまったまま数分がたちました。
確かにルーヴル美術館の工事現場に描かれてあったポップアートに似ているようにも思えますが、しかしそれだけではありません。訴えるものがあるのです。キャンバス上には、焼け焦げた顔、子供が描いたような飛行機、散りばめられた文字…、わざとかき消された文も書かれています。それは消滅した文明のメッセージなのでしょうか。「五千年前に私たちがのこしたメッセージ !! 」なのかもしれません。
3 枚の絵からは、人類がとりおこなった原初の儀式の言葉がつたわってくるようでした。「この 3 枚のタイトルは ?」ベノレナールがたずねます。「 'サングル・コーパス' と、'ワックス・ウィング'、そして 'ラジウム' です」。
「 3 枚とも買うが、30 % 引きでどうかね」ともちかけるベルナールに、画商は「15 % で・・・」。
次回は p160 " La semaine qui suivit, Bernard commença ses grands travaux......" からです。
© " Le chapeau de Mitterrand ", Antoine Laurain, J'ai lu