2023年5月2日
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今週も 5 課。テーマは『2022年 大統領選挙 L'élection présidentielle 』です。選挙にまつわる ( ここの所少し硬いテーマが続いてますね (^u^) ) 子供新聞の記事を 2 つ読みました。
まず最初の記事は、2017年の大統領選の二人の候補者についての記事です。こちら で読むことができます。
大統領選の第 2 回投票は、マリーヌ・ルペン氏とマクロン氏の争いになりました。両者の経歴は、あらゆる点で違っているそうで Tout oppose Mme Le Pen et M. Macron 、マクロン氏の両親は医師。中学校長だった祖母の影響を大きく受けて、政治を目指したとのこと ...ses ambitions politiques lui viennent de sa grand-mèm ancienne principale de collège 。
一方、マリーヌ、ルペン氏の父は極右政党党首。人種差別、反ユダヤ主義、反同性愛主義の発言で知られる人でしたが ...ce père...connu pour ses propos racistes, antisémites et homophobes 、そのもとで育ちました。またマクロン氏はパリ治学院 Sciences Po Paris と(旧)国立行政学院 l'Ena を卒業。エリートコースをたどり、民間投資銀行から大臣職へと抜擢。そして大統領に立候補。異例のコースをたどりました。マリーヌ・ルペン氏は法学を修め弁護士になった後に、議員となり父の跡を継いだそうです。
* * *
もう一つの記事は 2022 年の国民議会 ( 下院 ) 選挙 Élections législatives の結果についてでした。こちらで読むことができます。
国民議会 l'Assemblée nationale の議員数は、577。過半数をとるには少なくとも289議席が必要です。マクロン氏の政党は「共和国前進 La République en marche 」ですが、過半数割れをふせごうと、アンサンブル Ensemble という名で他党と協力し、245席をえました。しかし過半数には至りませんでした。
ぱらぱらだった左派も、NUPESという連合をつくりました。獲得議席は 131 。
そして特筆すべきは、ル・ペン氏ひきいる国民連合 Le Rassemblement national です。極右政党として、前回 ( 2017 年 ) はわずか 8 議席しかえられなかったのに、今回 ( 2022 年 ) は、89 人が当選。( おそるべき ? ) 躍進でした。
© A la page 2023, Editions Asahi
© 2023 Milan Presse - 上級
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今週は『地下鉄のザジ Zazie dans le métro 』です。前回は、モン・ド・ピエで、ガブリエルが踊りを披露しようと、招待客のまえで弁舌をふるっているところでした。
今回は舞台ががらりとかわってマルスリーヌのアパルトマンです。彼女は一人でガブリエルの帰りを待っています。マルスリーヌがソファでまどろんでいると Marceline s'était endormie dans un fauteuil ドアの外に人の気配が…。部屋の明かりを消して外の様子をうかがいます。鍵穴をまさぐっているようですが、やがてドアがあき、一人の男が音をたてないよう、靴を手にして入ってきますLa porte finalement s'ouvrit...il fit un pas...il tenait ses chaussures à la main 。マルスリーヌが息を殺していると、男はスイッチを見つけて明かりをつけます。マルスリーヌはすぐにわかりました。今朝、ザジにつきまとってやってきて、ガブリエルに追い出されたあげく、階段から落とされたあのペドロ・スュルプリュス ( 実はトロスカイオンとも名乗っていた男です ) でした。
男はマルスリーヌを見つけ、「さぞや怖がらせたことでしょう?」などと述べますが、マルスリーヌは「ちっとも」と応えたきり --- Je vous fous la trouille, hein ? qu'il demande galamment. --- Nenni, répondit... Marceline 。「こんな時間にわたしが来た理由を尋ねないんですか?」とも質問されましましたが、やはりそっけなく「いいえ」とマルスリーヌ。
マルスリーヌは心のなかで思います。「 "なにか理由があってやって来た " と私に思わせたいのね。そうは問屋が卸さないわよ...je ne lui ferai pas ce plaisir, ah mais non 」と。マルスリーヌの方が一枚上手です。
ペドロ・スュルプリュスはグラナディンをいただきに来たんですなどと言って、勝手にグラナディンを棚からとりだし飲み始めますが、しばし沈黙がただよいます。するとなぜかペドロ・スュルプリュスは、新しい名を名のります。「私はベルタン・ポワレ刑事だ。質問したいことがある。これが警察手帳だ」などとと、遠く( ! ) から手帳を見せます。そんなインチキな証明書なんてと鼻にもかけないマルスリーヌは、「質問したければ、どうぞ。答えないけど」と微笑みます。「そもそも刑事がこんな夜に家宅侵入して」と、ベルタン・ポワレの鼻をあかそうとします。が、ポワレは「私が犯したいのは別のもの 」などと言い出す始末 。「なんておっしゃつたの ? 」とマルスリーヌは優しく尋ねかえしますが、ベルタン・ポワレは、堰を切ったようにマルスリーヌへの情熱を告白し、あなただって、私の魅力に無感心ではいられないはずだ、などと豪語しはじめます。
次回は p202 " Qu'est-ce qu'il ne faut pas entendre ! --- Vous verrez. " からです。
© "Zazie dans le métro ", Raymond Queneau, Folio
2023年5月9日
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今週はすこし戻って 4 課。タイトルは「貧困と富 "La pauvreté et la richesse " 」でした。これに併わせて、" L'ATALAS DES INEGALITES" (1) という子供向けの本をのぞいてみました。テーマは「人間開発指数 l'indice de développement humain ( IDH ) 」についてです。
「豊かな」生活とは、お金があることだけではありません。社会のなかで教育を受けたり、病気を治せるような制度や組織・施設があることも「豊かな」生活には欠かせません "... bien vivre ... c'est aussi avoir accès à des services ( écoles, hôpitaux...)" 。
国連ではそのような視点から「人間開発指数 l'indice de développement humain ( IDH ) 」を計測して毎年、その報告書を出しているそうです。指数は、平均寿命 l'espérance de vie と教育・識字率 le niveau moyen d'études, le taux d'alphabétisation と、所得(一人当たり国内総生産) le PIB ( produit intérieur brut ) par habitant の 3 つを考慮に入れて、各国の状況を 0 ~ 1 までの数値であらわしています。2021年に最も高い数値だったのは 0.915 のアイルランド。ノルウェー、デンマークと続き、日本は 0.85 ( 16位 )、フランスは 0.825 ( 24位 )だったようです。
註 (1) MILAN社から出ている子供向けの ( 絵 ) 本です。以前に Le Monde Diplomanque の書評に載っていたのを購入しました。地球全体を見渡せるすばらしい図版入りの本です。おすすめです
© 2021 - Chaire UNESCO "Educations et sante".
© A la page 2023, Editions Asahi
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前回はダニエルがバーテンダーを買収して、なんとか店の予約台帳を覗けないものかと画策しているところでした。しかし、実際に 500 フランをちらつかせてみると思いもつかないリアクションが返ってきました。「私にはソノケはない」と。
ダニエルは大いに慌てますが、そこは当意即妙。「私にもソノケはない。実は私は私立探偵・・・」と返事。自分でも驚くばかりの機転でした。バーテンダーがにわかに興味をしめしはじめます。「予約台帳を見たい。見ることができたら、この500フランは君のものだ 」。
探偵小説ネストール・ブルーマ
探偵小説は読んでおくもんです。いや、マイク・ハマーの探偵番組を欠かさず見ていたことが功を奏したのかもしれません。どちらにしても、バーテンダーの了解をとりつけることに成功。バーテンダーには、500フラン札を半分にちぎり、その半分をわたします。「残りの半分は今夜だ」。「なんとかしましょう。19 時には用意しておきます」とバーテンダ―。
19 時きっかり。ダニエルは再び店にもどり、カウンターに腰かけます。バーテンダーと視線をかわします。「コーヒーを」と注文。バーテンダーはコーヒーと共に雑誌のパリジャンをもってきて、一言「21ページ」とささやきます。
ページをくる手ももどかしく、なんとか 21 ページをあければ予約台帳のコピーが。調香師のアスラン氏が食事をとった日に、BL のイニジャルをもつ予約客がいれば、それがダニエル ( 否 ミッテラン ) の帽子をもっていってしまった人物です。
しかし BL の記載はありませんでした。ただ、L で始まる客がいました。ラヴァリエール Lavalière …。これに違いありません。ダニエルは雑誌の同じページに500フランの半切れをはさみ、バーテンダーに返します。完全に私立探偵気分です。「よくやってくれた。21ページだ」。
自宅に戻るや、ダニエルは電話帳で、ラヴァリエールという名をしらみつぶしにさがします。しかしファーストネームが B で始まる人物は見当りません。テレビドラマの探偵であれば、オフィスにあるミニバーでウィスキーを片手に窓の外をながめ、事件解決の糸口を見出すことができるはずなのですが、如何せん、ダニエルのいる部屋にはミニバーはないのです…。
次回は p169 "Daniel s'assit dans son fauteuil en soupirant " からです。
2023年5月16日
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今週は第 7 課の『欧州グリーン・タクソノミー La taxonomie verte européenne 』です。
「タクソノミー」という語はあまり馴染みがないかもれませんが「分類」という意味です。語源はギリシア語。ラテン語源の classification ( 分類 ) の方がよくつかわれていますね。
そこでタイトルの「欧州グリーン・タクソノミー」ですが、これは環境を破壊しない経済活動を分類・規定したものだそうです "...une taxonomie verte des activités économiques qui respectent l'environnement "。
そもそも欧州は、2050 年には温室効果ガスの排出をゼロにすることを目指しています "leur engagement écologique commun : réduire les émissions de CO2 pour atteindre la neurtralité carbone en 2050 "。ですから太陽光発電や風力発電などのエネルギー事業を、グリーン・タクソノミーに分類しています。
ところが、天然ガスや原子力による発電もこのグリーン・タクソノミーにくわえられています "...le gaz naturel et le nucléaire en ( = de la taxonomie ) font partie " 。天然ガスは温暖化につながるメタンガスを出しますし、原子力発電は放射能の汚染物質を出します。それにもかかわらず天然ガスと原子力発電がグリーン・タクソノミーに分類されたのは、各国の政治的・経済的事情に配慮してのことだからだそうです。
というわけで欧州グリーン・タクソノミーは必ずしも完璧とは言えませんが、それでも地球環境に変動が起きている今、おおきな指標を世界に示しているとのことでした ネ 。
©Save 4 Planet 2020
© A la page 2023, Editions Asahi
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今週は『地下鉄のザジ Zazie dans le métro 』です。前回は、ペドロ・スュルプリュスが夜、マルスリーヌのアパルトマンに侵入し、マルスリーヌへの熱い思いを告げるところでした。
ペドロ・スュルプリュスは実は仮りの名で、「私は本当は刑事ベルタン・ポワレなのだ」などと言ったりするのですが、昼間は昼間でトルスカイオンと名乗っています。不可解な人物ですが、マルスリーヌに向かって「私がいかに魅力的かは、話しているうちにわかってくるはずだ "Un bout de conversation, ...mon pouvoir séducteur opérera " 」と胸を張ります。「もし分からなかったら ? 」とマルスリーヌが問い返せば、「あなたに飛びかかる !」などと返答。「できるものなら、どうぞ」とマルスリーヌは意に介しません。
男は勝手にグラナディンを注いで飲みながら、昼間にはムアック婦人なる女性をメロメロにさせたと武勇を披露。「そろそろ私の魅力に参ってません? Je ne vous charme toujours pas ? 」などと時折、質問をはさみながら、「ムアック婦人とあった時は、お気に入りの交通整理の巡査服を着ていた…」と語ります。
ところがここで突如、「着る se vêtir 」という言葉の使い方がわからなくなります。「 " 洋服を着なさい " は Vêtissez-vous ですよね エ 」と男。マルスリーヌは噴きだし、Vêtez-vous よと教えます。が、男はひきません。そこでマルスリーヌは男に辞書をひかせます。なれない手つきでようやく、「着る」の見出し語 vêtir にたどり着きます。「ほんとだ ! tu vêts, il vêt, nous vêtons, vous vêtez... こりゃあいい。とすると動詞 " 脱ぐ Dévêtir " はどうだ ! うん、Vêtir と同じ活用だ、ならば、マルスリーヌさん、Dévêtez-vous !! 」と一人で大騒ぎしています。
一人で騒いでいる男を尻目に、マルスリーヌは窓をこっそりぬけだし、壁に足をかけながら軽やかにおもての通りへと飛び降ります。そして街なかへと消えていったのでした...。
次回は p207 " Trouscaillon avait de nouveau revêtu son uniforme de flicmane. " からです。
© "Zazie dans le métro ", Raymond Queneau, Folio
2023年5月23日
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少し後戻りしますが、第6課のタイトルは『コーヒー le café 』でした。これにちなんで今回は、ル・カフェ・プロコップ Le Procope にまつわるテキストを読みました。
パリのサンジェルマンにある ル・カフェ・プロコップ Le Café Procope は老舗中の老舗。なにしろ創業は 1686 年。
シチリアの青年フランチェスコ・プロコピオ・デイ・コルテリは、とあるカフェでボーイとして働いていました。が、一念発起してその店を買いとります。そして新装開店。これがル・プロコップの始まりです。やがて芸術家や知識人たちが集う場となりました。
17 世紀にはディドロやヴォルテール、ダランベール、モンテスキューなどの啓蒙思想家らが次々と訪れ、革命期には 革命の" 総司令部 " にもなったと言います "Les plus grands écrivains et intellectuels du 18ème siècle - Diderot, Voltaire, Montesquieu et d'Alembert- défilent au Procope, qui devient un véritable QG durant la Révolution Française "。カフェの窓辺にはマラーが鳴らしたという鐘がのこされており、カフェの一室の壁には人権宣言が記されているそうです ヨ 。
© A la page 2023, Editions Asahi
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ナイト・ライダー : アメリカ
1980年代のアクションドラマ今週は、『ミッテランの帽子』です。
ダニエルはようやくのこと、「帽子をもち去ったのはラヴァリエールという名の人物である」ということを突き止めます。しかしその先が分かりません。ファーストネームと住所を知りたいのですが、万策尽きてしまいました。そんな折、息子のジェロームが突如居間に入ってきて「 "ナイト・ライダー" の時問だよ。テレビつけてっ ! 」とせがみます "...son fils entra dans le bureau...annonçant que c'était l'heure de ' K2000 ' " 。ダニエルは「ちょっと待って」と答えますが、その時に妙案が浮かんできす。調香師のアスランの説明によれば、ミッテランの帽子とすり替わった帽子とは全く同じ品。そうであるなら帽子屋も一緒かも…。そう考えたダニエルは、帽子屋に電話をしてみることにしました。
「ラヴァリエールと申しますが、住所が変更したのを御連絡していましたっけ ? " ...vous ai-je signalé mon changement d'adresse ? " 」。ラヴァリエール氏になりすましたダニエルに対して、顧客名簿を開いた店員が答えます。「ベルナール・ラヴァリエールさんでいらっしゃいますね。御住所はパリ14区パスィ通り16番地となっていますが…」。
ダニエルは気絶するかと思いました。ようやく帽子の居どころを突き止めました。やった、とガッツポーズのダニエル。
ダニエルはリモコンを手にとり " ナイトライダー " をつけます。巨悪にたちむかう孤高の戦士ナイト・ライダーのテーマソングが流れてきます。テレビの画面からわずか 1 m 、じゅうたんに腰をおろしているジェロームがテーマソングにあわせて体をゆらせば、ダニエルも頭を揺らします。そしてダニエルはあらためて確信します。「孤高の戦士に不可能はないのだ " Non, rien ne pourrait résister au chevalier solitaire. Maintenant, il en était sûr " 」と。
次の週末、孤高の戦士ダニエルはパリに向います。14区のパスィ通り16番でベルナール ( ラヴァリエール ) を待ちぶせします。案の定、ベルナールがリベラッスィオンを買いにキオスクにやってきました。ここから先に起こることはすでに記しました ネ 。リベラッスィオンをかかえたベルナールは、あっと言う間もなく、帽子を奪われ、少々髪を乱したまま歩道にたちつくしていたのでした。
* * * *
さて、こうして帽子をとり戻したダニエルですが、今は家族とベニスを訪れています。かつて新婚旅行でやってきた思い出の地です。もしあの帽子をとり戻すことができたなら、もう一度、ベニスを訪れよう。そしてテラスからプンタ・デラ・ドガーナが見晴せるあのホテルに泊まろうと、決めていたのです " Si je le retrouve, nous irons à Venise, ... s'était dit Daniel. Il avait décidé de revenir au même hôtel dont la terrasse donne sur la Dogana..." 。 ヴェロニックとジェロームとダニエルを乗せたゴンドラが運河を縫っていきます。ゴンドラは一瞬の間、暗闇につつまれ、やがてあかるい空のもとに出ます。運河にかかる橋の下をくぐったのでした。
次回は p173 "Ce fut l'occasion d'expliquer à Jérôme, que oui, c'était ... " からです。