2023年8月1日
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© Emma Clit
今週は 12 課です。タイトルは『 La charge mentale 精神的負荷 』。家事の大半を引きうけている人にとって、思わず膝を打ちたくなるテーマでした !! 「言ってくれればよかったのに… Fallait demander 」という台詞を副題にしたいところですが、その理由は次回にゆずるとして、まずはテキスト前半です。
家事はいつ終わるとも知れない作業。済ませるだけでも大変ですが、実は、「する」だけではありません。「する」以前に、しなければいけないことがたくさんあって、事前に確認して、どんな手順で片付けるか…そんなことを頭の隅で考えているのです。これが大したことでないようでいて、なかなか心理的に負担なのです ...c'est un poids psychologique 。今日の夕飯は何にしましょう、明日の弁当は ? 冷蔵庫になにが残っていたかな。たしか明後日は来客だから掃除機をかけないと…と、家事のあれこれがつねに頭のどこかにあって、la charge mentale となっているのです…。この続きはまた来週 m(__)m 。
© A la page 2023, Editions Asahi
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今週は『地下鉄のザジ Zazie dans le métro 』です。
前回は、ガブリエルたちが、トルウスカイオンの正体をあばいて、大さわぎとなったところでした。そこへ自転車にのった2人の「警官もどき」がやって、夜間にうるさいじゃないかと皆をとがめます。が、なぜかトルウスカイオンは体をはって(?)ガブリエルたちを擁護します。
自転車男の1人(le hanvelo )が、この辺で見かけない巡査だな、といぶかしがります。しかしトルウスカイオンは大胆にも、「そうかもしれん。しかし私はず~っと巡査なのだ」と胸をはります。「では一緒にいるこの者たちは?」と自転車男が尋ねると、「この人たち ( ガブリエルたち ) はヒソプ ( 罪をのぞいて清めてくれる草 ) のように大人しい人たちだ」と再び擁護。
やがて自転車男はガブリエルの香水の " フィオールのバルブーズ " をくさします。そしてザジが自転車男たちをバカ呼ばわりすると「子供は寝ていろ」といやみをはなち、ムアック夫人には「あんたは引っ込んでろ」とけんもほろろ。トルウスカイオンにむかっては身分証明書を見せろとはげしく迫り… … … とこんな具合で、騒々しいことこの上ありません。
すると、そこへ突如 ( 本物の? ) 警官たちが護送車に乗って駆けつけてきます。「夜間の騒音、迷惑行為、睡眠妨害!! 」と叫ぶや、トルウスカイオンと2人の自転車男を捕まえて連れ去ってしまいました。あっという間の出来事でした。とり残されたムアック未夫人は涙します。そのムアック夫人をガブリエは「あたたかいオニオンスープを一緒に飲みに行こう」と慰めます。
♦ ♦ ♦
スープにムアック夫人の涙が落ちます。夫人は熱々のスープを口に流しこみますが、その熱さにのどに火がついたよう。そこでガブリエルは、ほら消防だと、夫人のグラスに辛口の白ワインを次々とつぐのでした。
次回は p223 の " Zazie a rejoint La verdure dans la somnie. " からです。
© "Zazie dans le métro ", Raymond Queneau, Folio
2023年8月8日
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今週も前回につづき、12 課の『 La charge mentale 精神的負荷 』です。家事についての「精神的負荷」です。
テキストによりますと、一緒くたにしてはいけないものが二つあるそうです。その一つは「家事をする」ことと、もう一つはその「家事をどう按配するかを考える」ことです " Il ne faut pas confondre " organiser " et " réaliser les tâches domestiques "。
「手伝って欲しいことが
あったら言って」
©Emma家庭内で家事がうまく分担されていても、どこをどうするかを決めるのはだいたい、だれか一人。そしてその一人には案外、大きな精神的負荷かかかっていると言います。ところがこの負荷は目に見えません。ですから理解されにくいのだそうです。
「言ってくれればやったのに Fallait demander ! 」「して欲しいことがあれば言って Tu me dis si tu veux de l'aide 」…という心遣い (?) から一歩進んで、この目にしにくい精神的負荷が当事者同士で共有されるようになることが大切…なのだと思います ハイ 。
© A la page 2023, Editions Asahi
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今週は " le Chapeau de Mitterrand " です。前回はこの物語のエピローグでした。
大統領が紛失した帽子は、一体全体、どんな人の手に渡ったのか…大統領は、そのことを逐一、特別調査官 ( ? ) に調べさせていました。
まずはダニエル・メルシエ。帽子を手にして以来、なにかが 吹っきれて仕事は順風満帆。栄転をとげます。
次がファニー・マルカン。小説家の卵でしたが、結婚に踏みきれない相手に見切りをつけ、小説に専念。成功をおさめるとともに新たな伴侶も見つけました。
三番目はピエール・アスラン。調香師ながら、鼻が利かなくなり失意のなかにあり、精神科にかかっていましたが、帽子を手にするや新たな香水を創ることができるようになり、これが世界的反響をひきおこします。さて、その調香師のピエール・アスランもまた帽子を紛失します。あらたな帽子の持ち主は、アクサ社社長のベルナール・ドゥ・ラヴァリエール。保守的で因襲にあぐらをかいていましたが、なぜか帽子が新たな視点をもたらしてくれて、前衛美術とそのアヴァン・ギャルドな精神にめざめます。
エリゼ宮の公園
一方、どうしてもこの帽子をとり戻したかったダニエルは、新しい帽子の持ち主ベルナールを割り出していました。そのあげくに、大胆にも、路上で帽子を奪いかえしてしまいました。エリゼ宮の調査官はこうした顛末をすべて把握。そして大統領の耳に届けていました。大統領はエリゼ宮の公園で、愛犬の黒のラブラドールに棒を投げてやりながら、ふむふむと (!) ダニエルの帽子奪還の報告を聞き、" 本当か ? たいしたやり手だ " と、まさしく脱帽したのでした。
結局、帽子は大波乱の末、フィレンツェで大統領の手に戻りました。ですので、調査官が集めた情報書類はもはや不要。大統領はこれらの書類に、廃棄命令の署名をしたのでした。
* * * *
そして 20 年の月日が経ち…。
故ミッテラン大統領の遺品が、競売場のオテル・ドゥルオに出品されました。かずかずの品物のなかで、帽子は 19 個。しかし黒のフェルト帽は一つのみ。ミッテラン大統領はかつて社会党の党首でしが、その社会党が、この黒いフェルト帽を落札。その黒いフェルト帽がこの物語の黒い帽子かどうかは不明です。そうかもしれませんし、そうでないかもしれません。永遠に誰も知ることがないでしょう。* * * *
そしてこの競売が行われていたころ…。フィレンツェのオフィス ( ウフィツィ ) 広場では、ピエール・アスランがカフェでアスティをすすっていました。いまや伝説の人。悠々自適の引退生活を送っているのでした。
次回は p189 " Fanny Marquant devint la veuve de Michel Carlier - l'homme au chapeau gris - quelques années après l'ouverture de sa librairie ! からです (確かここからです…。印をつけ忘れました m(__)m )。
2023年8月22日
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© Emma Clit
今週は 13 課の『ジョゼフィーヌ・ベーカー Joséphine Baker 』です。
2021 年 11 月 31 日、ジョゼフィーヌ・ベーカーはパンテオン廟にはいりました Le 30 novembre 2021, Joséne Baker a...été panthéonisée 。アメリカ生まれアメリカ育ちですが、19 歳でダンサー・歌手としてフランスにわたりレビューの舞台に立ちます。
後にフランスに帰化 ...elle obtient la nationalité française し、ドイツの占領下ではレジスタンスに参加 ...elle s'engage dans la Résistance française 、アメリカの公民権運動にも加わります。歌手として世界をまわる折に、各国の孤児を養子にし 12 人の子供を育てたそうです。
そういえば、ジョゼフィーヌ・ベーカーとパンテオンについては、以前にこちらの子供新聞でご一緒に読んだことがありましたね。
© A la page 2023, Editions Asahi
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今週は『地下鉄のザジ Zazie dans le métro 』です。
前回は、ニセ巡査のトルウスカイオンが本物の (と思われる ? ) 刑事に護送車で連行され、そのためにムアック夫人が涙したとこめでした。ガブリエルが夫人を気の毒に思い、他の仲間を誘ってオ・ニクタロプというビストロに行ったのでした。ただでさえハチャメチャなお話しの連続ですが、今回も(次回も…最後まで ? )そのハチャメチャに拍車がかかります。
ムアック夫人はガブリエルがついでくれるミュスカデのせいで ぐでんぐでん です。一方、ザジはテーブルでまどろんでいましたが、片目を開けると、あら、このおばさん、まだいたの ? - Tiens...elle est encore là la vieille taupe とイヤミを放ちます。
テュランドとグリドゥは、トルスカイオンとつるんでいたこのムアック夫人をうさん臭いと思っていました。ですからムアック夫人が、テュランドとグリドゥの会話に口をはさんで「あんたも含めてみんな馬鹿よ」と言い放ったために、グリドゥから平手打ちを食らいます。が、ムアック夫人もすかさずお返しのびんたをグリドゥに返します。するとグリドゥが再びムアック夫人をはたき、ムアック夫人がこれに応じる…と、たたき合いが延々とつづきます。
これを見たテュランドはなんてこった Palsambleu と叫んで、店のテーブルのあいだを縫うようにして飛び跳ねはじめ、ガブリエルの「瀕死の白鳥」の舞いの真似事をはじめます。この間、オウムのラヴェルデュールは鳥かごの外に糞をまき散らし…となんとも騒がしい状況になって来ました。
この騒動を好ましく思わぬ二人のボーイが、やにわにテュランドのわき下をかかえて、店の外の通りに放りだしてしまいました。
が、これを目撃したガブリエルが反撃。もどってきた二人のボーイのそれぞれ頭をつかんで、シンバルのように頭どうしをぶつけます。ボーイは床にくずれてしまいました。するとこれを見ていたグリドゥとムアック夫人がなぜか意気投合して、ブラボーとガブリエルをたたえ…。
しかしどこからかもう一人のボーイが登場。ボーイはサイフォンを手にもって、ガブリエルの頭を打とうとします。が、これを察知したグリドゥがすかさず別のサイフォンをボーイにむかって投げます。これが放物線を描いて、ボーイの頭に命中。…と今回は( も ) ドタバタでしたが、これがまだ続きそうです。ヤレヤレ…。
次回は p228 の " Palsambleu ! hurle Turandot qui, ayant repris son équilibre sur la chaussée ... " からです。© "Zazie dans le métro ", Raymond Queneau, Folio
2023年8月29日
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今週は、14 課の『 異世代同居 La cohabitation intergénérationnelle 』です。若い人と高齢者とが一つの家に暮らす試みについてです。
若者が親元をはなれるときに、まずはしなければならないのは住まい探しです。大きな都市ではとくに家賃は高く、そうそう広い住まいを望むことはできません。そこで、広いアパートや家を共同で借りてくらす " シェアハウス " を選択する人もいるようです ...beaucoup de jeunes en France, étudiants ou travailleurs, font de la colocation : à plusieurs, ils partagent un appartement ou une maison 。
一方、シェアハウスは、シェアハウスでも、 2004 年あたりから登場したのは、高齢者と若者との同居だそうです。家さがしに苦労する若者がいる一方で、自宅に空いた部屋をもつ一人住まいの高齢者が少なくない、という状況から異世代同居というアイデアが生まれたようです。そのための団体ができ、行政も後押ししているそうです。
いくつかの基本的な決まりと、若者と高齢者双方の希望・条件をもとにした個別の約束がかわされるそうです。大枠としては、60歳以上のシニアと 30 歳以下の若者とが対象であること "Le senior doit avoir plus de soixante ans...Le jeune, lui, doit avoir moins de trente ans " 。提供される部屋は 9 m2以上であること、台所、ふろ、洗面所などは共有とすること等々 " Le senior doit...proposer au jeune une chambre de 9 m2 minimum. Il doit aussi l'autoriser à utiliser librement les parties communes : cuisine, salle de bain, toilettes... 。
異世代同居は定着しつつあり、70 % が契約更新をしているそうです。テキストの最後は、私たちへの質問でした。" Et vous, est-ce que vous partageriez votre vie quotidienne avec une personne d'une autre génération dans une cohabitation intergénérationnelle? 読者の皆さんは、世代の違う人と同居して、日常をともにすることができますか ?
© A la page 2023, Editions Asahi
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今週はうれしいことに、とうとう " le Chapeau de Mitterrand " を読み終わりました !! 著者の言い回しがなかなか凝っていて、少々、謎解きのような箇所もありましたね。それと時代背景…1980年代後半の世相が満載でした。しかしウィットに富んでいて、愉快だったり、辛辣だったり。おおいに楽しみました。さて、その最終回の内容は…
ミッテラン大統領没後 20 年。ファニー・マルカンは夫の亡きあと、とある高貴な英国人と再婚。サセックスで少々退屈しながらも、それなりに短編も著して暮らしているようです。
そしてもう一人の帽子の ( 束の間の ) 持ち主ベルナール・ドゥ・ラヴァリエールは、前衛美術に目覚め、バスキアの絵を買い続けていました。買うのをやめたのは、ベルナールの財力をもってしてもバスキアの作品は買えないほどの値段になってしまったからです。当初、彼の保守的な仲間は「そんな絵を買って」とさんざん、くさしていましたが、絵の価値がうなぎ上りに上がるや、その態度は豹変。称賛と嫉妬にかわりました。そして最初に帽子を拝借した張本人のダニエルはというと、栄転後も昇進をつづけ、今では悠々自適の引退生活。『大統領の帽子』という小説を書きはじめましたが、まだ 20 ページ。先は見えていません。
--- 完 ---