2023年10月3日
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今週は 17 課の『 マルチニーク La Martinique 』です。
マルティニークは、カリブ海の(小)アンティル諸島の中の一つの島。フランス領です " La Martinique est une île française située dans l'archipel des Antilles, dans la Caraïbe " 。人口は約 35 万人、面積は沖縄くらいだそうです。島の北部には今も活火山であるプレ山がそびえています。1906年に大噴火して、26 万の住民のうち生存者は2人だったそうで、麓の町サン・ピエールは壊滅したと言います。 " En 1902, Saint-Pierre a été entièrement détruite lors de l'éruption de la montagne Pelée. Il n'y a eu que deux survivants " 。
現在はいろいろな出自の人がくらしています。元をただせば、アブヤ・ヤラ註 (1)、インド、アジア、アフリカ…などからきた人たちです " Ses (la population martiniquaise ) origines sont très diverses : d'Abya Yala, d'Europe, d'Asie...et surtout d'Afrique " 。16 世紀には、ヨーロッパの人がこの島にやってきましたが、もともと住んでいた人は虐殺されたり、持ち込まれた疫病で途絶えてしまいました。その後、アフリカからたくさんの人が奴隷として連れてこられました。ボルドー、ナント、ラ・ロシェルなどの港を出た船が、アフリカの人々を乗せ、マルチニークなどの島々やアメリカ大陸へと送ったのでした。三角貿易と言われていますね。
註 (1) アメリカ大陸は「発見者」の名をとって、アメリカと呼ぶようになりましたが、もともと住んでいた人々はこの大陸をアブヤ・ヤラと呼んでいました。ですからアブヤ・ヤラはアメリカのことです。
エメ・セザール、ウーザン・パルスィ、フランツ・ファノン
© A la page 2023, Editions Asahi
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前回は、重装備した男にちが、ガブリエルらのいるビストロの前に整列し威嚇している・・・というくだりでした。部隊を指揮しているのは、なんと、かの偽警官のトルスカイオン。それに気づいたムアック夫人がかけよりますが、驚くべきことに銃殺されてしまいました。ガブリエルたちは恐れおののいて、身を寄せあっている・・・そんなくだリでした。
* * * *
その時です。ガブリエルたちが立っている床が沈み始めます。業務用のエレベターが地下へと下っていったのでした。頭上では銃声がとどいろいています。エレベーターを動かしてくれた男が、暗闇のなかで、懐中電灯を照らし、急いでついてくるようにと指示します。一同、暗渠をつき進んでいくと、地下鉄の線路へと出ることができました。地下鉄は、ストライキを終了して運行しはじめていました。男は「一緒にいては目立つ。ここで別れよう。ガブリエル、君はなおのこと目立つ。ザジは私が、母親の待つ駅へ連れて行く」と言い、寝ているザジを抱きます。
* * * *
一方、愛人と二日間を過ごしたジャンヌ・ロシェルことザジの母親は、ベッドであられもなくいびきをかいている男をながめます。「この人がどうしてもと言うなら話しは別だけれど、これで終わりね」などとつぶやき、タクシーでザジの待つ駅へと向かいます。 駅のホームでザジを見つけたジャンヌは、懐中電灯の男に「あら、マルセル」と声をかけます 。そう、懐中電灯の男は、なんと、かのマルセリーヌだったのでした !! 「じゃあ」と別れを告げるマルセルに、眠け眼のザジは「さよなら、おじさん」と挨拶。列車に乗りこんだ母親のジャンヌはザジにたずねます。
「地下鉄に乗れた ? 」「ううん」とザジ。 「じゃあ何をしたの ? 」「年をとったわ」とザジ・・・。--- 完 ---
© "Zazie dans le métro ", Raymond Queneau, Folio
2023年10月10日
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今週は 17 課の『 マルチニーク La Martinique 』の続きとして、こちらの国連のサイトの記事を読みました。( すこしつらい内容ですが ) 大西洋をはさんだ奴隷貿易についてです。
奴隷制度というのはいろいろな形で古今東西、存在しているそうです。が 15,16 世紀に始まった、大西洋をはさむ奴隷貿易は、400 年間もつづき、 1500 万人の人がその犠牲になったそうで、人類史の汚点の一つとのこと " Pendant plus de 400 ans, plus de 15 millions d'hommes, de femmes et d'enfants ont été victimes de la dramatique traite transatlangique des esclaves..." 。
© Nicolas Dern^eacute;
一方、カリブ海の島ハイチはフランスの植民地でしたが、1791 年に、奴隷にさせられた人々が蜂起し、十数年後に独立を果たします ( とはいえ、独立に対ししてフランスに莫大な賠償金を払わねばならなかったのですが… )。
独立を求めると同時に、奴隷貿易廃止もかかげていました。その両者が一つになった運動でした。ですから国連は、この蜂起が起きた 8 月 23 日を「奴隷貿易とその廃止を記念する国際デー」と決めたのだそうです。ハイチの反乱は、わたしたち一人一人、誰もが人権を持つことを知らせたという点で、人間の歴史の転換点になったとさえ言えるとのことでした " Cette révolte a marqué un tournant dans l'histoire humaine. " 。
18世紀の奴隷貿易
© A la page 2023, Editions Asahi
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今週は『影泥棒 Le voleur d'ombres 』です。前回は、転校生の僕が新学期早々、先生から罰を受けて、土曜日に落ち葉掃きをする羽目になった、というところからでした。落ち葉掃きのために校庭にでかけると、イヴという用務員のおじさんがいて、おしゃべりするうちに僕の得意なものは何かと聞かれたので、なぜか「僕は、夜を思い通りにすることができる」などと答えていました。イヴは大笑いして、笑ったことをゴメンと謝ったのでした…と、そんなお話しでした。
* * * *
イヴが、「どうして、夜を思い通りにしたいんだい ? 」と聞くので、「おじさんだって、子供のころ、夜がこわかったでしょ。だから、夜がはいってこないように雨戸を閉めて ! って言ってたじゃない " Vous demandiez même qu'on ferme les volets de votre chambre pour que la nuit n'entre pas " 」と答えた。なぜだか、僕には、イヴの子供のころのことがわかってしまったんだ。イヴには言わなかったけれど、イヴの部屋は壁紙が黄ばんでいて、床がきしんでいて、それがイヴを怖がらせていたことも、僕にはわかってしまった。
イヴはびっくりして、どうして私の子供のころのことを知っているのかと尋ねた。そして怖がり屋だったことを、他の生徒たちに言わないと約束すれば、今日の罰をはやく終わらせてあげるとも言った "...si tu me jures de garder le secret, je te laisserai filer à 11 heures au lieu de midi " 。もちろん僕はすぐに同意。「想像してそう言っただけ」とこたえたけれど、二人とも黙りこくってしまった。やがてイヴが、さあもう帰っていいよ、と言った。
帰り道、僕はお父さんに、どうやってこの罰のことを説明しようか考えていた。お父さんは、旅行から帰って来たばかり。お母さんから、今日の僕の落ち葉掃きのことを聞いているはずだ。
とその時、僕は自分の影が異様に大きいのに気がついた。そして驚いたことにその影の人の子供時代が見えた "...je trouvai mon ombre étrangement grand...je vis soudain un moment d'enfance qui ne m'appartenait pas " 。その子供は折檻をされていた…。僕は怖くなって、かけ足で家にかえった。© " Le voleur d'ombres ", Marc LEVY, Edition Robert Laffont
2023年10月17日
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今週は 18 課の『 運動と健康 L'activité physique et la santé 』です。
運動が健康によいのは周知のこと "...tout le monde le sait : l'activité physique, c'est bon pour la santé " 。動けばストレスの解消にもなります " Bouger, c'est aussi un bon moyen pour évacuer le stress " 。
時々でもよいのですが、定期的に体を動かせば、鬱や骨粗しょう症、脳卒中、糖尿病のリスク軽減にもなるとのこと "...elle(la pratique régulière ) réduirait considérablement le risque d'avoir certaines maladies : dépression, ostéoporose, AVC (Accident vasculaire céréral ), diabète " 。さらには短時間に集中しておこなえば、脳にもよろしい…といいことづくめです。W H O が推奨するのは、子供であれば一日に一時間、大人ならば週に五日間半時間のスポーツをすることだそうです。
© A la page 2023, Editions Asahi
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前回、『地下鉄のザジ』を読み終わりました !! ので、今週からは『 L'élégance du hérisson 優雅なハリネズミ 』を読みはじめます。まずはイントロからです。
パリエール家の息子が、今朝、こう話しかけてきました。普通なら、私に声をかけることなど滅多にないのにです。「マルクスを読んで人生観が180度、かわった」と言うのです。目をきらきらさせて、条件反射的に私に話しかけてしまったのでしょう。
迂闊にも私もまたこう返事をしてしまいました。「だったら『ドイツ・イデオロギー』をお読みなさい」と。 そしてまるで猫にでもささやくように、「" 欲望 " を蒔く者は、" 抑圧 " を収穫するのよ」などとつぶやいてしまったのです。
パリエール家のボンボンは私を見つめ、たった今耳にした言葉に確証がもてないでいるようでした。どうやら私は救われたようです。またしてもあの " 思いこみ“ というものに救われたのでした。
管理人ごときが『ドイツ・イデオロギー』を読むはずがない、という思いこみ。従ってマルクスが書いた「フォイエルバッハについてのテーゼ」の11番目をそらんじることなど、できるはずがない、という思いこみです。 仮りにもし管理人がマルクスを読んでいたとしたら、それは社会転覆をねらっているからだなどと勘ぐるにちがいありません。
というわけで、私が発してしまった言葉は、「偏見という力」のおかげで聞こえなかったことになったのでした。私はパリエール家の御曹司に「お母様によろしくね」と言って、扉をバタンとしめたのでした。
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私の名前はルネ。54才。23年前から庭園つきの大きな大きな建物の管理人をしています。建物には、8 戸のアパルトマンが入っていて、そのどれもがとてつもなく広くて豪華な住まいです。私はその 8 家族に雇われている管理人なのです。
醜女で、学歴も財産もなし。太っちょの猫と暮しています。この猫は、私同様、人(猫)付き合いはよくありません。
私は礼儀は守りますが、不愛想です。でも管理人としてうまくやっています。それは「アパルトマンの管理人とはこういうものだ」と社会が決めつけている管理人像に、私がほぼ一致しているからでしょう。例えば、気難しい老婆で、猫を飼っている。その猫は日がな一日まどろんでいて、テレビはつねにつけ放し。台所からはつましい煮物料理の匂いを漂わせている・・・そんなイメージです。
次回は、p16 " A semblable chapitre, il est dit que les concierges regardent interminablement la télévision..." からです。© " L'élégance du hérisson ", Muriel Barbery , Editions Gallimard
2023年10月31日
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© 2023 Milan Presse
前回 の『 運動と健康 L'activité physique et la santé 』と同じテーマの子供新聞を読みました。
そもそもスポーツは疲れるし、けがをすることもありますが "...c'est fatigant...et tu pourrais te blesser " 。それでもスポーツがよいとすれば、一体、なんの役にたつのでしょう "A quoi ça sert de faire du sport ? " 。
体を動かすと、600 の筋肉が機能して " Quand tu bougent, les 600 muscles de ton corps travaillent... "、体を柔軟にしたり、強くしたりしているそうです 。そしてその筋肉にきちんと支えられた骨は、正しい場所で成長し "Bien tenus par les muscles, tes os grandissent au bon endroit..." 、強くなってくそうです。
スポーツには決まりややり方がありますが、それをこなせれば達成感もうまれますし、悲しみや怒りを消してくれることさえあるとのことでした "...quand tu y arrives, tu est content...elle (une potion du plaisr = l'endorphine) te fait oublier tes colères et tes chagrins " 。
© A la page 2023, Editions Asahi
© 2023 Milan Presse - 上級
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今週は『影泥棒 Le voleur d'ombres 』です。前回は、僕が罰をうけて、学校の校庭の落ち葉掃きをいるところでした。イヴという用務員のおじさんのおかげで、少し罰をはやく切りあげることができました。
帰り道、きっとお父さんは、僕のことを怒っているだろうな、だから家に着いたら叱られるにちがいない・・・とそんなことを考えていたのでした。
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お父さんは台所で僕を待っていました。怒っている様子は見えません。ただ悲しそうでした "...papa n'avait pas l'air fâché, juste triste " 。お父さんと向かい合って食卓につくと、お父さんは両手で僕の手を包み、お母さんと別れることになったと告げました。話したのはわずか10分くらい。最後に、お母さんが悲しがっているから、2階に行ってお母さんをなぐさめてあげてくれと言い、席をたちました。階をのぼりきった時、僕がふりむくと、お父さんは小さなかばんを一つもって、さよならの合図をして "...papa avait une petite valise à la main. Il me fit un signe en guise d'au revoir..." 出ていきました。
土曜と日曜。お母さんは僕に涙をかくし、時折ため息をついていました。これからの二人の生活の記念にと、お母さんはケーキを作り、ろうそくをたてました。そして僕の手を握って「学校でこまったことがあったら話してね」と言いました。僕の頭の中はお母さんのことで一杯で、マルケスのいじわるのことは忘れていました。
* * *
月曜日。歴史の授業が終わり、休み時間になりました。僕が一人で校庭のベンチにすわっていると、マルケスが僕の横にすわり、僕の肩をつかんで僕をバカよばわりしながらこう言います。「おれはクラスで一番年上だから、学級委員に立候補する。だからじゃまするんじゃないぞ」と。
足もとには僕とマルケスの影がありました。僕はそっと体をずらして、僕の小さな影をマルケスの大きな影の上に重ねました " Je me suis déplacé subrepticement pour que mon ombre prenne le dessus " 。マルケスは肩で僕を突いていましたが、僕はこっそりこう思っていました。「影では、僕の方が上だ」って。エリザベスの姿を見つけたマルケスは、僕に「おまえは動くなよ」と命令して去っていきました。
ちょうどその時です。イブが深刻な顔をして僕のところにやってきたのでした。次回は p34 " -Je suis désolé pour ton père, me dit-il. " からです。
© " Le voleur d'ombres ", Marc LEVY, Edition Robert Laffont