2024年7月9日
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大統領の役割今週は第二課の『 Emmanuel Macron et le parlement francçais エマニュエル・マクロン大統領とフランス議会 』を読みました。
マクロン大統領は、2017年-2022年に第一期をつとめました。議会に多数派をもっていましたので、法案をわりにすみやかに通すことができました ...il avait une majorité qui lui était favorable au Parlement et il a pu entreprendre des réformes assez rapidement 。ですが、2022年からの第二期は、マクロン氏を支持する議員の数が絶対多数にとどいていません。このため法律を可決させようとしてもうまくいっていません。
たとえば年金改革。国民からの大きな反対がおきましたし ...la réforme des retraites...a suscité beaucoup de mécontentement ...dans toute la France 、議会でも反対がおおく、なかなか採決することができませんでした。そこで当時の首相が、特例措置をつかって議会での投票なしで法案を通してしまいました。この特例とは 「緊急かつ重大な事項については、議会の投票なしで法律をとおすことができる」という憲法の 49 条 3 項 のことです La première ministre Elisabeth Borne a utilisé plusieurs fois l'article 49-3 de la Constitution française pour 'Débloquer' la situation...。ちなみに、この 49 条 3 項 は単に " quarente-trois neuf " と呼ばれています。
こうしたやり方をおこなうマクロン政権に対しては、" 苦況にある人たちの困難な生活を理解できていないのではないか " ...Certaines personnes... pensent qu'il ne peut pas comprendre les difficultés des gens en situation de précarité と考えている人もいるようです。
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この課のテキストを読もうとしていたその時になんと !! 、マクロン大統領が突如、下院 ( = 国民議会 ) を解散しました。そして総選挙がおこなわれました。
突如解散した理由は、それより少し前の欧州議会選挙で、フランス人が極右候補をたくさん送りこんで当選させたからでした。
マクロン大統領はこれに危機感をいだき、国内の下院 ( = 国民議会 ) を解散したのでした。それにしても選挙結果にもビックリしました ネ …。© Hirondelle 2024 Editions Asahi
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今週は、ミュエル・バルベリ Muriel Barbery の『優雅なハリネズミ L'élégance du hérisson 』です。
前回は、ルネが今は亡き夫との暮しについて語るくだりでした。一生独身で過ごすと考えていたルネでしたが、夫の誠実な結婚の申し出に、それまでの人生ではじめて自分の心を開き、その申し出を受け入れたのでした。
夫は結婚前に「伴侶となる人ととともに静かであたたかい家庭をつくりたい、そして自分はまじめに働く」と語っていましたが、彼はそのとおりに生き亡くなりました。ところで、ルネにはもう一人、きさくに話しができる相手がいました。ベルナール・グルリエです。彼の妻ヴィオレット・グルリエは、アルタン氏の家で執事をしています。アルタン氏とはかの美食評論家です。夫のベルナール・グルリエとは日常の些事から文学論にいたるまで、なんの気負いもなく話すことができます。しかし妻のヴィオレットの方は、夫のべルナールや家政婦のマニュエラをこき使い、頭ごなしに仕事を言いつける人でした。
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そのマニュエラがある日「あの人 ( ヴィオレット・グルリエ ) はマルクスを読んでいないわ」と言いました。マニュエラ自身がマルクスを読んでいるわけではないのですが、彼女のこのせりふは、妙に的を射ていて、私は思わず膝をうったのでした。
なにしろあのヴィオレット・グルリエは、アルタン家の金泊をまとった家具をきんぴかに保たねばならない役をになっています。ですから、彼女が目をとおすのは、掃除用品のカタログばかり。このカタログにマルクスが登場することはないからです...il (= Marx ) ne figurait dans aucune liste de produits nettoyants pour argenterie de riches 。* * * *
- - - 第三節後半「深い思考 No 2 」 - - -
12才の「私」の独白
この世の猫は現代のトーテムである。
そして時にはインテリアにもなる。トーテム ( 象徴 ? ) とかインテリアとかいう言い方が正しいかどうかわからないのですが、我が家では猫がまさしくそうなっています。まず象徴であるというのは、うちの猫を見れば私の家庭がどんなかがわかるからです Si vous voulez comprendre notre famille, il suffit de regarder les chats 。2 匹の猫はいずれも垂れたお腹をしています。高級キャットフードをたらふく食べているためです。
人間には目むきもせず、毛をまきちらしながらソファーからソファーへとのろのろ移動しています Ils (= les chats ) se traînent d'un canapé à l'autre en laissant des poils partout... 。ですので動くインテリアと言えなくもありません。
次回は p55 の " Ma mère, qui a lu tout Balzac et cite Flaubert à chaque dîner, ...からです。
© " L'élégance du hérisson ", Muriel Barbery , Editions Gallimard
2024年7月16日
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今週は子供新聞を読みました。前回が第二課 『 Emmanuel Macron et le parlement francçais エマニュエル・マクロン大統領とフランス議会 』でしたので、同じテーマのこちらの記事などを読みました。タイトルは『 国民議会選挙ってなあに C'est quoi, les élections législatives ? 』です。
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このほどマクロン大統領が総選挙をおこなうと発表しました。6 月 30 日と 7 月 7 日が投票日です " Le président de la République vient d'annoncer que de nouvelles élections législatives seraient organisées trè prochainement : les 30 juin et 7 juillet procahins " 。
( 1 回目の選挙で過半数をとった候補がいなければ、2 回目の選挙を行います。なので投票日が 6 月 30 日と 7 月 7 日です。)フランス全土が 577 の選挙区に分かれていて、そこから 1 名の議員を選出します " La France est découpée en petites parties, appelées circonscriptions, et les électeurs de chaque circonscription votent pour un député "。ですから国民議会の議員数は 577 人 。解散がない限り、任期は 5 年。
議長席 perchoir
法案について議論しあい、その法律を成立させるかどうか賛否をとります" Leur (= les élus, les députés ) mission principale, c'est de discuter les idées de lois, puis de voter pour ou contre leur adoption. "。この審議は毎週テレビで火曜日と水曜日に放映されているのだそうです ヨ " Cela passe à la télé, chaque mardi et mercredi。
© Hirondelle 2024 Editions Asahi
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今週は『影泥棒 Le voleur d'ombres 』です。
前回は、校庭のベンチでイヴさんと語り合ったことと、満月の夜に屋根裏で影と出会った話しでした。
ベンチでイヴさんは、僕が前に助言したとおり、記憶をたどってお母さんからの手紙を再現してみた、と言いました。手紙が、あの例の火災で燃えてしまったからです。が、その時、イヴさんの影と僕の影とが交叉し、その影が僕にこうささやいたのでした。
「イヴの母親はイヴが生まれると同時に亡くなっている。だから母親からの手紙は存在しない」と。僕はイヴさんが嘘をつかねばならなかったことに、悲しみをおぼえました。そしてその夜。僕はお母さんと、テレビでアマゾンの森林伐採のドキュメンタリーを見ました。樹々が切られ、ナマケモが死んでいくことは、僕たちに無関係のこととはとても思えませんでした。
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Un paresseux en danger dans la zone déboisée.
(Photo : Village Prosperite.)お母さんはテレビの前で眠りこけています。疲れているのでしょう。僕はテレビの音を上げてみました。目を覚ましません。音をもとどおりに下げて、僕はそっと屋根裏部屋にのぼりました。間もなく満月が窓に顔をだすころです。僕は窓を背にして、気をつけの姿勢で立っていました。
22 時ぴったりに影が現れました。胸がばくばくし、微動だにできませんでした ...je me tenais bien droit, dos à la vitre,...mon coeur battait à cent dix pulsation minute...。ところが、僕が直立しているというのに、影は両腕を上げたり、頭を左右に揺らしたり、横をむいたり、あげくの果てにあっかんべえをしたのでした。影は僕から離れ、ダンボール箱によりかかりました。
僕は思わずたずねました。「君は誰の影? Tu es à qui ? " 」と。すると「誰の影だと思うの? A qui veux-tu que j'appartienne ? 君のに決まっているでしょ」と影。そして、そこの箱を開けてごらん、と僕に指図します。驚いたことに初めて開けるその箱には、僕が生まれたばかりの時の写真がはいっていました。
僕はまるでしおれたピクルスみたい。まったくパッとしない写真でした Je ressemblais à un gros cornichon flétri...Je n'étais pas à mon avantage... 。が、次の写真をみると、僕はお父さんにだかれています。お父さんは、僕が見たこともないほほえみを浮かべ、そのきらきらとした視線が僕にそそがれていました。影は言いました。「お父さんが君を愛していたことが分かるだろ。どんな言葉よりも雄弁だ Tu vois, ...il t'a aimé...cette photo vaut toutes les belles phrases..." 」って。僕はこの写真をとっておきたくてパジャマの胸のポケットにしまいました。
すると影がなおも言いました。「話さなければならないことがあるから、そこに座って」と。
次回は p93 の " Je me suis assis en tailleur sur le sol " からです。
© " Le voleur d'ombres ", Marc LEVY, Edition Robert Laffont
2024年7月23日
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下院議事堂前
スポーツをする女神たち今週は、第 3 課の " Les Jeux Olympiques et paralympiques de Paris パリ・オリンピック・パラリンピック " と、子供新聞です。子供新聞のタイトルは " Des pièces pour les JO オリンピック記念硬貨 " と " B-girl Carlota se prépare pour les JO de breakdance プレークダンス競技の本番を間近にひかえるカルロッタさん" 。こちらとこちらで読むことができます。
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パリ五輪には、新競技としてブレークダンスがくわわるそうです。また東京オリンピックであたらしくくわったスケートボード、ボルダリング、サーフィンも、ひきつづきパリ五輪で争われるそうです。
ブレークダンスの記念切手
そしてパリ五輪は歴史上はじめて、参加選手の男女の数をほぼ同じにしたとのこと " Les Jeux Olympiques de Paris seront les premiers de l'histoire à accueillir autant d'athlètes femmes que d'athlètes hommes " (© Radio France Des jeux olympiques paritaires pour la première fois de l'histoire ) 。
ただ懸念材料も依然としてのこっているようです D'autres bémols subsistent 。経費が予算を超えていること、会場の建設現場で在留資格のない人が働いている問題 l'emploi d'ouvriers sans-papier sur les chantiers de construction 、住まいをもたない人が、受け入れ先が不十分なまま、パリを追われている、とのことでした。
いずれにしても開幕間近。よき祭典になりますように 。
ちなみにパリ五輪の正式名称は、Les jeux de la XXXIIIe olympiade なのだそうです ネ 。
© Hirondelle 2024 Editions Asahi
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今週は、ミュエル・バルベリ Muriel Barbery の『優雅なハリネズミ L'élégance du hérisson 』です。
前回は、すこし話しが脱線して、上階に住むアルタン家の執事をしているヴィオレット・グルリエについてでした。この執事のヴィオレットは自分があたかも雇い主であるアルタン家に同化してしまったかのように横柄にふるまい、家政婦をしているマニュエラたちをこき使いうのだそうです。しかも仕事への愛、良き振舞いをマニュエラたちにとくとくと語るのだそうです。
そして章がかわります。かのパロマが猫について語ります。曰く、猫は現代版トーテムポールであり、ときどき動くインテリアになるという自説を展開します。
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エトルリアの小像
猫はトーテムポールに似ています。飼われている猫は、その家族を象徴する存在であり、家族の庇護者であるからです。そして猫は、家の中で動くインテリアとなることもあります。
母は、バルザックの全作品を読み、食卓ではフロベールを口にするという教養ある人です。しかしいくら高い教育を受けたとしても、そんなのがまやかしでしかないことがすぐに分かります " Ma mère, qui a lu tout Balzac et cite Flaubert à chaque dîner, démontre ... à quel point l'instruction est une escroquerie fumante 。なにしろ母は猫にむかって、まるで人間に話しかけるように声をかけるのです。ランプやエトルリアの彫像には声をかけたりしないのにです。
確かに猫は喜びや苦しみを感じることのできる、か弱い存在です。でも人間とのコミュニケーションはできないと私は考えています。猫はあくまで動くインテリアなのです
ところが母は「うちのコンスティテュションは ( コンスティテュションは猫の名前で「憲法」という意味。もう一匹の猫はパルルマンと名前で、その意味は「議会」 ! ) 、とても気高くとても繊細なのよ」といいます。母はとにかく、自分の家族がこうあって欲しいという姿を猫にもとめています " Ma mère fait des chats ce qu'elle voudrait que nous soyons ..." 。裏を返せば、父も母も姉のコロンブも気高さや繊細さとはほど遠いということです。要は、猫とはトーテムポールの現代版なのです。人はシンカとかブンメイとかについて偉そうに議論しますが "...on a beau faire des grands discours sur l'´volution, la civilisation et tout un tas d'autres mots en 'tion' 、しょせん私たちは人間が誕生して以来、ほとんど進歩していないのです。なぜ私がそう思うか。それは人々が「人間は決して偶然の存在ではなく、神々の加護のもとに連命づけられている」と信じているからです。
- - - 第三節後半「深い思考 No 2 」 終わり - - -
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- - - 第四節 「闘いを拒んで」 - - -
(再び管理人ルネの独白です)私は実ににくさんの本を読んできました。
でもすべてが独学ですから、本当に理解したのかどうか確信をもつことができません " Pourtant, comme tous les autodidactes, je ne suis jamais sûre de ce que j'en ai compris "。あれこれと手当りしだいに読んだ本から、知識の枝葉がのびて、ある時その枝葉が互いに呼応しあって、知の全体が見わたせたと思えることがあります。
でもそれらが突如として、なんの意味ももたなくなることがあるのです。
これでは、気のふれた老婆がメニューをじっくり読んだら満腹になったと思い込んでいたのと変わりません ...je me fais l'effet d'une vieille folle qui corit son estomac plein d'avoir lu attentivement le menu " 。私はすぐれた指導者に恵まれたことがありません。ただ、実はそのことが、かえって型にとらわれない自由な考えかたを可能にしているともいえます。
折しも今朝、私は台所で一冊の本を前にして当惑していました。もしかしたらとうとう本当の師に出会えたかもしれないと思えたからでした。
その人の名はフッサール。とっつきにくい名前です。決してペットにつけたい名前ではありませんし、チョコの商品名にも不向きです。
次回は p58 の " Je considère que mon destin m'a apppris mieux qu'à quiconque, ...からです。
© " L'élégance du hérisson ", Muriel Barbery , Editions Gallimard
2024年7月30日
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今週はテキストの第 4 課。タイトルは『 La baguette バゲット 』でした。
バゲットの起源は実は、あまり明らかではないそうです "...les détails concernant l'origin de la baguette sont ...assez flous...。もともとは丸いのが普通だったそうで、それだからこそ「丸 = boule 」を意味するオランダ語から「パン屋 " boulanger " 」の呼び名ができたとか "...le terme ' boulanger ' a d'ailleurs pour origine un mot néerlandais siginifiant ' boule ' 。パンが長くなった理由は、パンの需要が増えて、はやく焼き上げられるようにするためだったという説があるようです。醗酵したパン種 ( le levain ) ではなく、イースト菌 ( la levure )を使うようにしたこと、そしてパンの形を細く長くしたこと、そうすることではやく焼けるばかりか、そのままの形で売ることができるようになったのだそうです...grâce à leur forme fine et longue, les baguettes peuvent être cuites plus rapidement et vendues telles quelles 。
tradition, classique, flûte
ところがバゲットはやがて工場で大量生産され、スーパーに並ぶようになります。そこで 1993 年に法律ができ、工場でつくられたり、冷凍されたり、添加物がくわえられたパンはバゲットとは呼べないようになったとのこと。
ところでバケットにはたくさんの種類があります。トラディスィオン la baguette tradition とクラシック la baguete classique の他に、フィセル la ficelle 、フリュト la flûte 、サルマンティヌ la sarmentine 、ヴィエノワ la baguette viennoise 、エピ la baguette épi 等々と実にたくさんです !!
filcelle, épi, sarmentine
© Hirondelle 2024 Editions Asahi
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今週は『影泥棒 Le voleur d'ombres 』です。
前回は、「僕」が屋根裏部屋で影と再会する場面でした。窓からさしこむ満月の明りで、僕は自分の影と向きあいました。僕は緊張して直立不動。なのに影はからだを揺らしたり、横むいてあっかんべえしたり…。
その影が「そのタンボールの箱をあけてごらん」と言うので、蓋をあけると、僕が生まれたばかりの写真がたくさん。お父さんが僕をだき、目をかがやかせて僕を見つめている写真がありました。「わかったでしょ。お父さんが君をどんなに愛していたかを」と影。そしてさらに「話したいことがあるからそこに座るように」と僕に命ずるのでした。******
影が言うには、僕には他人の影と話しができるというすごい力があるのだそうです。だから怖いかもしれないけれど、その力を使わなければいけないというのです"...tu as un pouvoir très rare, il faut que tu accepte de t'en servir, même s'il te fait peur " 。「お父さんの写真を見てうれしかっただろ ? 」と影にたずねられて、僕は心のなかで思いました。
( お父さんから連絡はないけれど、あの写真をみたおかげでお父さんが僕のことを思ってくれていることがわかった…) と。
すると影は僕の心を読んでしまったらしく "...l'ombre (poursuivit) comme si elle avait lu dans mes pensées " 、写真がきっかけで僕の気持が晴れたのだから、今度は君がよその人の心を明るくしてあげなさい、と言うのでした。
と、その時…。誰かが僕の肩に手をおいたのです。僕は思わずうなり声をあげ、ふりむきました "Une main s'est posée sur mon épaule, j'ai poussé un hurlement. Je me suis retourné..." 。お母さんでした。「影と話しをしているの?」をたずねたので、僕は一瞬期待をもちました。僕が影と話せることをお母さんが知ってくれたらどんなに気持ちが楽かと。でもお母さんは「さびしいのね」と言って僕をだきしめただけでした。
僕は影が僕になにをもとめているのかがわかった気がしました " J'avais compris le message et ce que les ombres attendaient de moi " 。だから僕はお母さんに手紙を書いてもらうことに決めました。僕がまだお母さんのお腹のなかにいる時に、お母さんが感じていたことを手紙に書いて欲しいと頼みました。
次回は p96 の " Et tou voudrais que je te l'écrive maintenant, cette lettre ? " からです。
© " Le voleur d'ombres ", Marc LEVY, Edition Robert Laffont