2025 年 7 月 1 日
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今回から心機一転です
新しい教科書 『 Hirondelle 2025 』を読んでいきましょう !!
まずは第一課から。タイトルは「 Le cannelé de Bordeaux ボルドーのカヌレ 」です。カヌレはボルドーのシンボルともいえるお菓子になりましたが、その起源はあまりはっきりしないそうです ...s'il (= le cannelé ) est devenu un symbole de Bordeaux, son origine n'est pas certaine 。修道院でつくられていたものの、革命で修道院は閉じられ、作り方も不明のままになったそうです。ただボルドー・ワインとは切っても切れない関係にあるようです。
© Kobunsha Co., Ltd.
というのもワインは製造過程で濁りを除去しなければなりませんが、そのときに古くからの方法としてたくさんの卵の白身が使われていたそうです ... les ignerons utilisaient les blancs d'oeuf en quantité, pour supprier les matières qui rendent le vin trouble 。そうすると黄身がたくさん余ります。その余った黄身の使いみちとして生まれたのがカヌレだったとのこと。
一時は忘れさられたお菓子でしたが、近年ではカヌレの人気は急上昇 ? だそうです。外はカリカリ、中はしっとり Croustillant à l'extérieur et moelleux à l'intérieur …焼きたての熱々をいただくのも一興だとか…ウーム…そそられますねェ
© 『時事フランス語 2025年度版 Hirondelle 2025 』 朝日出版社
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今週は『影泥棒 Le voleur d'ombres 』です。
前回は...リュックがパンをどうやって毎日作っているのかを大いに語り、仕事に戻っていったくだりでした。
僕が母のもとに行くと、母はバラの手入れをしている手を休めて、「あなたたち二人 ( ソフィーと僕 ) は、お似合いね」と言います。僕たちが昨晩、屋根裏に上がったのも知っていて、母もまた一人で淋しい時には、あの屋根裏にのぼっていたのだと語るのでした・・・と前回はここまで。* * * *
母は「ソフィーには正直に向き合いなさい」と言います。どうしてそんなことを言うのかと思いました。が、僕が忙しさを理由に、ソフィーにはっきりとした態度をとっていないことを見抜いていたのでしょう。
この時、僕はすでに、もう一晩ここに残って母と過すことを決めていました。二階に上がると、ソフィーは頬杖をついて窓の外をぼんやりながめています Je suis remononté dans la chambre. Sophie était accoudée à la fenêtre, le regard dans le vide 。そのソフィーにむかって、大学の授業と夜勤とを休みたいと思っていることを伝えました。ソフィーは、僕の欠席・欠勤をうまくとりはからってくれると快諾してくれました。こうしてソフィーは一人、一足先に大学にもどっていったのでした。
母は僕がとどまったことに嬉しそうではありましたが、なにか特別な意図があってのことでは、と疑っているふしもありました。夕食後、皿洗いは後でいいから ...elle... m'a dit que la vaisselle pouvait attendre, 、よければ屋根裏部屋に行きましょうと母に誘われます。明り窓の前に二人でこしかけました。
僕はずっと前から知りたかった疑問を母にぶつけました。「お父さんとは、一度も連絡をとっていないの?」と。母は僕の質問の真意をはかりかねているかのようでしたが、逆にこう問い返されました。「今でもお父さんのことを思うことがあるの?」と。僕も質問をしかえします。「どうして一度も僕に会いに来てくれなかったのだろうか」と。
母が語り始めました。「実はそれは、長いあいだあの人 ( = 僕のお父さん ) を私が許すことができなかったからなの」と。しかも母は別れた後も父をずっと愛していたと言います。
次回は p174 の Ce dont je l'accablais le plus nétait pas de m'avoir quittée,,... からです。
© " Le voleur d'ombres ", Marc LEVY, Edition Robert Laffont
2025 年 7 月 8 日
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今週は、新しい教科書 Hirondelle 2025 時事フランス語 の第二課です。タイトルは『Les bouquinistes des quais de Seine セーヌ河岸のブキニスト 』です。
セーヌ河岸には、ルーヴル美術館からノートルダム寺院にいたるまでの約 3km にわたって、ブキニストが並んでいます ...trois kilomètres de magasins sur les quais de Seine entre le musée du Louvre et la cathédrale Notre-Dame 。いずれも小さな構えの古本屋で、その数 900 !! だそうです。探偵小説専門のお店やら、マンガだけを売る店もあるそうですが、だいたいは、古い本やポスター、絵ハガキ、観光客向けのお土産品等々をそろえているようです。
お店はいずれも緑色。1891 年にそのように決められたとか。開通したばかりの地下鉄も、モーリスの広告塔も、ヴァラスの泉もみな緑色にそろえたのだそうです ヨ 。
左:モーリスの広告塔 / 右:ヴァラスの泉
© 『時事フランス語 2025年度版 Hirondelle 2025 』 朝日出版社
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今週は、ミュリエル・バルベリ Muriel Barbery の『優雅なハリネズミ L'élégance du hérisson 』です。
前回は、一つはパロマの独り言。そしてもう一つはルネの語りでした。
まずはパロマから。姉のコロンブを憂えるくだりです。姉のコロンブは突然きれい好きになりました。そのため、あそこが汚いここが不潔だと腹をたてては、家族に当たり散らしています。「私 」( = パロマ ) からすれば、姉は内面の混乱を補うために、周囲に清潔さや秩序を強要しているのだと思います。そんなことをしてもなんの意味もないのですから、それが分かっていたら、姉だって楽に生きられるのにと思うのです。続いて「私」( = ルネ ) の語りです。
私の管理人室にマニュエラがやってきました。 アルタン氏が危篤になったために、家事の仕事がキャンセルになり、私のところにたち寄ってくれたのです...と前回はここまで。* * * * *
マニュエラは階段のところでアルタン家の次女のローラを見かけたと言います。ローラは優しい娘さんですが、滅多にアルタン氏に会いにくることはありません Laura est la fille cadette des Arthens, une gentille fille aux visites peu fréquentes 。今日のローラは、なぜか階段でうずくまり、マニュエラが声をかけると立ち去っていったそうです。一方、長女のクレマンスはフラストレーションの塊。はまり込んだ信心のせいで家族をなやませています。
そして末子のジャンは、かつては愛らしい元気な男の子でした。が、どう道をふみはずしたのか、今では麻薬中毒にかかっています。体の動きも、発する言葉もぎこちなく、ところかまわず動きをとめて、そのまままどろんでしまうことさえあります。
ある時は敷地内の花壇のまえで麻痺したようにじっとしています。「何かしましょうか」と私は助け舟をだしてみました。「腰をおろしたらいかが ? 」とも促してみました。「いかがって ? 」とジャンは驚いたようすで聞きかえしてきます。「ああ…いいえ」という、心もとないながらも、一応の返事がかえってきましたので、私は管理人室にもどったのでした。
それでも気になり、窓から彼の様子をうかがっていましたが、やがて驚いたことに管理人室の前にやってきました Je... le surveillai de la fenêtre. ... Au bout d'un moment, il ... rallia ma loge ... J'ouvris avant qu'il n'échoue à sonner 。とうていブザーを鳴らすことはできそうもありませんから、私が先にドアを開けました。するとジャンが私を見ることなく、「これからちょっと動くようにします・・・」とたどたどしく言います。そして渾身の力をふりしぼって「あの花って・・・なんていう名前・・・?」とたずねます。「ツツジだけれど・・・」と答えれば、「ツツジ・・・ツツジ・・・」と言葉を重ね、意外なほどしっかりと、「ありがとう、ミシェルさん」と言って去っていきました。
それからしばらくジャンを見ることはありませんでした。しかし今日、再びジャンを目にすると…。あまり衰弱ぶりにジャンとは見分けがつきませんでした Je ne le revis pas pendant des semaines... Je ne le reconnus pas tant il avait chu 。その変わりようがいたましく、胸がしめつけられるようでした。エレベーターのボタンを押せるだろうかと、気をもんでいると、アルテン家で働いているベルナール・ガルニエが突如あらわれ、ひょいとジャンをかかえてエレベーターの中に消えていきました。
このべルナール・グルニエは夫婦そろってアルテン家で働いています。妻のヴィオレットはアルテン家の執事。べルナールは妻のもとで働いているのです。アルテン氏宅を辞してきたばかりのマニュエラによれば、この執事のヴィオレットは、氏の様態を深く嘆き、涙しているとのことでした。
次回は p106 の " Côtoyer le linge fin n'y donne pas plus droit qu'au malade la santé ... " からです。
© " L'élégance du hérisson ", Muriel Barbery , Editions Gallimard
2025 年 7 月 15 日
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今週はヴァラス卿という人がパリに寄贈した「水飲み場」についてです。「ヴァラスの泉 la fontaine Wallace 」と呼ばれているそうです。
鋳物でできていて緑色です。緑色なのは、19 世紀後半にバリの町が、地下鉄とモリスの広告塔 ( les colonnes Morris ) とブキニスト ( 古本屋 ) と、そしてこのヴァラスの泉を緑色に統一することに決めたからだそうです。
カリアティッド
ヴァラスの泉には、4 人のカリアティッド cariatides という女性が立っています。古代ギリシアでは、天井を支える柱に、カリアティッドと呼ばれる女性 ( 巫女 ) が彫られていましたが、それを模したそうです。
ヴァラス卿がパリの町にこの水飲み場を提供したのは、当時のパリの人々の窮状を見かねてだったようです。1870年から71年、フランスとプロイセン ( ドイツ ) は戦争 ( 普仏戦争 ) をしていて、最後はプロイセンがパリを包囲していました。そして同じころにパリコミューンもありました。働く人たちによる蜂起です。そんな状況のなか、多くの人は飲み水や食べ物を手に入れるにも困っていたそうです。そのために慈善家のヴァラス卿が私財をとうじて泉を設置させたとか。2010 年からは、なんと炭酸水の水飲み場も登場 ...certaines fontaines à boire distribuent même de l’eau pétillante !! ペットボトルを減らそうという算段だったようですョ !!
© 『時事フランス語 2025年度版 Hirondelle 2025 』 朝日出版社
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今週は『影泥棒 Le voleur d'ombres 』です。
前回は・・・僕は母と屋根裏部屋にあがり、このような機会がなければとうてい聞くことのなかった問いを発してみました。「お父さんはどうして⼀度も僕に会いにきてくれなかったのか」と。母が、父を決して許すことができなかったからというのが理由でした。そして母は今でも父を思っているとも・・・。母の影ではなく、母自身のことばでした。僕は母を抱きしめました。翌朝、僕は夜の明けぬうちにこっそり家を出て、リュックのパン窯のある小屋まで行きました。リュックに気づかれぬよう、リュックのお父さんに声をかけました。リュックが医学部で勉強することを許可してほしいを頼むためでした。・・・と前回はここまで。
* * * * *
リュックのお父さんは最後までじっくり話しをきいてくれはしたものの、最後は「もういい、帰れ」と言うだけでした。
こっそり家に戻ると、母からなにをしてきたのか詰問されます ... tu va me dire ... ce que tu faisais dehors à cette heure-là . 。正直に話すと、リュックの人生はリュックだけが決められることだから C'est à lui et à lui seul de décider de sa vie 、たとえ良かれと思ったとしても、過ぎたことはするべきではないと、さとされます。母自身、看護師としてひとのために良かれと思うことをやりつづけてきたのに・・・。
翌朝、僕は列車に乗り、プラットホームでいつまでも僕を見送る母の姿を車窓からながめるのでした。
1O日後、母からの手紙が届きました。返事はいつもながらとどこおりがちです。が、ようやく重い腰をあげて手紙を書きあげました。末尾にソフィーからもお母さんによろしくとのことです、と付けくわえました... mes derniers mots étaient pour lui dire que Sohpie l'embrassait 。しかし実のところ、僕とソフィーとの間にはすきま風が吹いていました。ソフィーにアタックしているインターンのせいでした。僕は奮起し、2 週間の後にソフィーと僕はもとの鞘におさまったのでした。
次回は p174 の Ce dont je l'accablais le plus nétait pas de m'avoir quittée,,... からです。
© " Le voleur d'ombres ", Marc LEVY, Edition Robert Laffont
2025 年 7 月 29 日
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今週は、映画の " Anatomi d'une chute " ( 落下の解剖学 ) についてのテキストを読みました。
夫の死は事故なのか、自殺なのか、あるいは他殺なのか S'agit-il d'un accdident, d'un meurtre ou d'un suicide ? 。捜査の末、妻のサンドラに嫌疑がかかります。
その捜査が進む現在と、夫婦の過去とが交叉しながら映画は展開します。サンドラは裁判にかけられ、弁護側と検察、サンドラ本人と…法廷で、たくさんの証言がくり広げられます。息子のダニエルは目が見えませんが、彼も証言台に立ちます。そして夫婦のかつての激しい諍いを録音したテープも流されます。サンドラは無罪を勝ちとります。
しかしサンドラが本当に罪を犯していないのかは明かされないまま映画は終わります ...même si on ne sais pas si elle est innocente, Sandra est acquittée 。一つの悲劇をまえにして、それをどう見るかの視点は複数。絶対的な真実は見つからないことを、映画の鑑賞者は受け入れざるを得ない、とのことでした。
© 『時事フランス語 2025年度版 Hirondelle 2025 』 朝日出版社
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今週は『影泥棒 Le voleur d'ombres 』です。
前回は、僕が、リュックに内緒でこっそとりリュックのお父さんに会ったくだりでした。リュックにパン屋の修業ではなく、医学の道を進ませてあげてほしいと頼むためでした。お父さんはじっくり僕の話しをきいてくれましたが、ただ「もういい、帰れ」というのみでした。家に戻ると、母は僕の魂胆を見抜いていて、出過ぎたことはしてはいけないと僕を諭します。こんな風にふるまうのは実は、母ゆずりなのでしたが・・・。翌朝、僕は母と別れ、大学に戻りました。
ふたたび夜勤と医学部の生活がはじまりました。が、実のところ、僕とソフィーの間はシックリとはいっていませんでした。しかし僕にライバルがいることを知って、僕は奮気。ソフィーとの撚りはもどったのでした。
* * * * *
9 月初め、僕が夜勤からもといると、なんとリュツクが小さなスーツケースに坐って僕を待っていました。「随分、またせるなぁ、おなかがペコペコだよ」と言いつつ、ここに来るまでに至った顛末を語りはじめます。曰く・・・
「君とソフィーが去ってからというもの、父さんはすっかり人がかわって ...depuis ce soir-là, il n'était plus le même 、僕 ( = リュック ) が失敗しても叱らないばかりか、優しいことばをかけることさえあった。そしてついにはパン職人はお前に向いていない ...la boulangerie ne devait pas être faite pour moi...・・・と言って僕を首にしたんだ。母さんは台所のすみで泣いていた。だから母さんのかたわらに行ったら、実はよろこんでいた。僕が自分で自分の道を選べるのだからと嬉しくて泣いているんだ、って。
翌日、父さんが僕を車に乗せ、長い道のりの後、僕をおまえのアパルトマンの前に降した。僕でさえ、おまえがどこに住んでいるか知りもしないのに。最後に、パン職人にも医者にもなりそこねたら、戻ってこい。そん時はじっくり修行させてやる」って言って、これが精⼀杯だといいつつ少しの貯えを僕にわたして ...il m'a tendu une eveloppe en me disant que...ce n'éait pas grand-chose mais que c'était le mieux qu'il pouvait faire ... 去っていった」。こう、ひとしきりしゃべったリュックは、「一体どうなってるのかわかるか」と僕にたずねました。僕は一本しかないワインをとりだし、二つのコップに注ぎつつ、しらを切ろうと決め込んで「さっぱりわからないね」と答えるのでした。
新学期の 10 月にむけて、僕はリュックの入学手続きを手伝いをしました。同じ学校で再びリュックと過ごせることになって、僕は思わずリュックの影にありがとうと言ったのでした。
次回は p186 の Luc s'installa chez moi. Notre cohabitation était des plur faciles,... からです。
© " Le voleur d'ombres ", Marc LEVY, Edition Robert Laffont