8 月 12 日、19 日はお休みになります。
よろしくお願いいたします。
2025 年 8 月 5 日
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今週は第四課。2021 年に改変されたバカロレア ( 大学入学資格試験 ) についてです。タイトルは『 Le nouveau baccalauréat 新しいバカロレア 』。
口頭試験
かつてのバカロレアは、その合否が、6 月に実施される筆記試験だけで決まりました。しかし新しいバカロレアでは、高校での成績 les évaluations faites pendant l'année も考慮されるようになりました。いわゆる内申書 le contrôle continu です。そしてあたらしく 口頭試験 le Grand Oral も加わりました。内申書が 40 %、筆記・口頭試験が 60 % の割合で成績が出されるようになったそうです。
新しいバカロレアの導入は、受験生たちが将来にむけてよりよく備えることができるようにするため、というのが政府の見解 Selon le gouvernement, la réforme du bac vise ainsi à ... mieux les (= les éleves ) préparer pour l'avenir なのだそうです。が、保護者や生徒のなかには、内申書のつけ方等で高校によってばらつきがあり ...certains sont inquiets des inégalités entre les différents établissements scolaires "、 機会の平等 l'égalité des chances が失われると危惧している人たちもいるとのこと…。
バカロレアの結果発表
© 『時事フランス語 2025年度版 Hirondelle 2025 』 朝日出版社
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今週は、ミュリエル・バルベリ Muriel Barbery の『優雅なハリネズミ L'élégance du hérisson 』です。
前回は、ミュリエルが私のところ ( = ルネの管理人室 ) にやって来たくだりでした。
アルテン家で家政婦をしているミュリエルですが、氏が死線をさまよう容態のため、休みを出され、それで午前に、私のところに立ち寄ったのです。
アルタン氏の家庭医シャブロ氏によれば、氏は長男のポール以外とは誰とも会いたがっていないとのこと。それでも長女のクレマンス、次女のローラ、次男のジャンが氏のもとにやってきたようです。このジャンはかつてはキラキラした目の愛くるしい男の子でしたが、今では麻薬中毒で日常の動作もままなりません。今朝、久方ぶりにアルタン氏のもとにやってきたジャンを見ました。が、その姿は実に痛ましいものでした。
アルタン氏宅を辞していきばかりのミュリエルによれば、執事のヴィオレットは雑巾で目頭を押さえているとのこと。
私は思わず、アルタン氏のハンカチは絹だったことを思い出して、所詮、雑巾と絹とがまじわることはないのね・・・などとも思った次第。
…と前回はここまで。* * * * *
ミュリエルとのティータイムはいつも午後と決まっていました。ところが今日はこんな具合で特別に、午前となりました。私たちの習慣がやぶられてしまったのですが、それがかえって新鮮味をもたらしました。お茶の香をかいで、飲んで、カップをソーサーに置き、もう⼀杯注いで、また味わう・・・こんないつもの動作が新しい息吹をえたかのようです ...les gestes machinaux prennent un nouvel essor, où humer, boire, reposer, servir encore, siroter revient à vivre une nouvelle naissance 。世の中が決して平穏ではないことは知っています。でもだからこそ⼀杯のお茶が大切なのです。
岡倉覚三 ( = 岡倉天心 ) は『 茶の本 』を著した人ですが、彼は、13 世紀のモンゴルで諸部族が反乱をおこしたことを憂いました ...Kakuzo Okakura, l'auteur du "Livre du Thé", ... se déollait de la révolte de tribus mongoles au XIIIe siècle...。反乱で殺戮と荒廃がもたらされたわけですが、それよりも覚三が憂えたのは、宋の文化の華ともいえる茶道が途絶えたことでした。
次回は p108 の " Lorsqu'il devient rituel, il constitue le coeur de l'aptitude ... " からです。
© " L'élégance du hérisson ", Muriel Barbery , Editions Gallimard
2025 年 8 月 5 日
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今週は第四課のタイトルが『 Le nouveau baccalauréat 新しいバカロレア 』でしたので、これに併せて、子供新聞を読みました。タイトルは " À quoi ça sert de faire de la philosophie ? 哲学することはなにの役に立つの ? " と " Baccalauréat 2013 : ce que tu dois savoir 2013 年のバカロレアで知っておくべきこと " です。
バカロレア試験は 7 日間にわたりますが、その第一日目の試験科目は、哲学 épreuve redoutée ( 恐るべし ? ) です。こんな問題が出るそうです。
"La vérité est-elle toujours convaincante ? 真実はつねに説得力をもつのでしょうか" とか、
" Les lois peuvent-elles faire le bonheur ? 法律は幸福をもたらすことができるできるでしょうか " というような出題です !!ウ~ム テゴワイデスネエ
子供向けにも哲学の本がたくさん出ているようです。 たとえば、ミラン出版社からは『 Les Goûters philo 哲学を味わおうシリーズ 』。
© Milan
ガリマール社からは『Paix. 40 artisans de paix 40 人の平和をつくった人たち 』。むずかしい言葉をやさしくかみ砕いて説明してくれているのだそうです。疑問を持つ、そして答えをさがす…そのことが大切なのだとか
!!
© Éditions Gallimard jeunesse
© 『時事フランス語 2025年度版 Hirondelle 2025 』 朝日出版社
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今週は、ミュリエル・バルベリ Muriel Barbery の『優雅なハリネズミ L'élégance du hérisson 』です。
前回は、マニュエラがお茶をのみに、私 ( = ルネ ) のところに立ち寄ってくれたくだりでした。私たちはこれまで、午後の⼀ときをお茶の時間に充ててきました。このひと時がいつしか習慣となり、日常にあらたな息吹を吹き込む貴重な時間になっていました。
しかし、今回はいつもと異なり、突然のマニュエラの訪問で、これまでにないほど新鮮なティータイムになりました。外に目をやれば世の中が平穏でないことはわかっていますが、だからこそこの束の間の静寂が大切なのです。岡倉覚三(天心)もその著作『茶の本』で茶の文化を讃えているではありませんか。…と前回はここまで。
* * * *
私は思います。茶を嗜むことは、日常に非日常をもたらします。不条理な私たちの人生に風穴をあけます。貴賤にかかわりありません。その単純な動作の営みが静寂をもたらし、至高の時がうまれるのです... se sublime le temps " …。
以上
第十一節「モンゴル襲来がもたらす荒廃について」
終わり* * * *
第十一節後半「深い思考 No 6」
朝食になにを飲んでいるか なにを読んでいるか
それがわかれば、
あなたがどんな人かがわかります
- - - パロマのモノローグです- - -私 ( = パロマ ) の父は、朝のコーヒーと新聞を欠かしません。どんなに遅く就寝したとしても必ず6時に起きます。濃いコーヒーと朝に読む新聞とが、昨日までの自分とは違う自分をつくるのに欠かせないのです。大人って、こうやっていつも自分のアイデンティティーを再生しなければならないのです...il faut sans cesse reconstruire son identité d'adulte...。父の場合は、コーヒーと新聞とが、" 自分は重要人物である " という安心・自己暗示をつくりだしているのです。
ただ偽りの人生を送っている人の場合は、この自己暗示は高くつきます。マスクがはがれ、おそろしい真実が顔を出すからです。
7階に住むアルタン氏は今、危篤状態ですが、アルタン氏は実に厄介な人だったと思います。厄介な人は周囲のすべてを嫌います。自分自身さえ嫌います。
次回は p111 の " Vous ne le sentez pas, vous, quand quelqu'un a la haine de soi ? ... " からです。
© " L'élégance du hérisson ", Muriel Barbery , Editions Gallimard